/ブラウンシュヴァイク侯は、フント男爵のドイツ人大移民団を米国独立弾圧の傭兵軍に変え、ロスチャイルド家を通じてその利益を仏大オリエント社のエジプト十字軍に投資。しかし、その大統領オルレアン平等公は武装市民革命を企て、マインツ独立の失敗、ロベスピエールの独裁、ナポレオンのクーデタと、メイソンリーは迷走していく。/
「クニッゲ男爵が、ロスチャイルド家をオルレアン公や「フランス大オリエント社(GOdF)」に仲介していた?」
「それはどうかわからない。ただ、クニッゲ男爵は、自由都市フランクフルトで、イルミナティのコスタンツォ侯に会った」
「コスタンツォ侯って?」
「宮中(プファルツ)選帝(クア)伯ヴィッテルスバッハ家の傍系の傍系のビルケンフェルト伯ヴィルヘルムの宮廷官」
「ぱっとしないなぁ。それに、伯に仕えている侯って変だろ。身分が逆じゃないのか」
「落ちぶれて、ぱっとしないから、インチキ組織で一発逆転を狙(ねら)ったんだろ」
「それで、クニッゲ男爵は?」
「これが、イルミナティを本気にしちゃったんだ。それで、彼一人で五〇〇名も集めた。というより、新聖堂騎士団(テンプラー)ボーデ派がごっそりイルミナティに入った、ということかな」
「でも、バイエルンのイルミナティなんて、ほとんど実体が無いんだろ」
「おもしろいのは、ヴァイスパウプト教授が、そのことを正直にクニッゲ男爵に告白して謝罪したことだよ。それで、むしろ組織の完成をクニッゲ男爵に委ねている」
「クニッゲ男爵だって、まだ三〇前だろ」
「もちろん黒幕はボーデさ。八一年には、「厳格(ストリクト)新聖堂騎士団(テンプラー)」の拠点を統帥ブラウンシュヴァイク侯のブラウンシュヴァイク市からヴァイマール市に移してしまっているし」
「そんなことしたら、ブラウンシュヴァイク侯が怒るだろ」
「ああ、怒ったね。それで、翌八二年七月にハーナウ市郊外ヴィルヘルムスバートのロスチャイルド家の豪邸で国際メイソン大会が開かれた」
「そんなに大規模だったのか?」
「いや、各国三六大ロッジの代表による会議だ。大ブリテンも入っていないし、プロシアも親書を送っただけ。問題は「厳格(ストリクト)新聖堂騎士団(テンプラー)」内の主導権争いだからね」
「で、どうなった?」
「「フランス大オリエント社(GOdF)」に近いボーテ派によって、中世聖堂騎士団(テンプラー)起源説は否定された。でも、ブラウンシュヴァイク侯は、代わりに聖地善行騎士団(シュヴァリエ・ベネフィシアン・デュラ・シテサンテ)説を了承させた」
「それ、ブラウンシュヴァイク侯がフランスのリヨン市のウィレルモに作らせた組織でしょ?」
「メイソンも、種々雑多の寄せ集めなんだ。ボーテ派のような啓蒙主義者もいれば、それを批判するオカルト主義者もいる。ブラウンシュヴァイク侯は、その隙(すき)を利用したんだ」
歴史
2020.09.30
2020.10.30
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2021.01.12
2021.03.22
2021.05.25
2021.08.20
2021.08.20
2021.09.09
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。