/ブラウンシュヴァイク侯は、フント男爵のドイツ人大移民団を米国独立弾圧の傭兵軍に変え、ロスチャイルド家を通じてその利益を仏大オリエント社のエジプト十字軍に投資。しかし、その大統領オルレアン平等公は武装市民革命を企て、マインツ独立の失敗、ロベスピエールの独裁、ナポレオンのクーデタと、メイソンリーは迷走していく。/
「ジャコバイト(ジェームズ派)が断絶して共和政になったら、領主として認められるかどうかわからないし、大ブリテンに敵対して敗北したら、別のやつが自分の領地の領主として任命されて来るかもしれないからなぁ」
「おまけに、彼が受け入れようとしていたドイツの「厳格(ストリクト)新聖堂騎士団(テンプラー)」も、プロシア王の義弟のブラウンシュヴァイク侯に乗っ取られて、独立運動を弾圧する大ブリテン側についてしまったんですよね」
「ついてしまったどころの話じゃないよ。ブラウンシュヴァイク侯の子分、カッセル方(ラント)伯カールが、チューリンゲン(中部丘地)やヘッセンで喰い詰めていたドイツ人の没落貴族や貧窮農民を三万人もかき集めて、大ブリテンの傭兵奴隷として新大陸に送り込んだんだ。これは大ブリテンの正規軍より多い」
「大移民団が大傭兵団に化けてしまった?」
「結果として、そういうことになるな」
「でも、大ブリテンからの独立を夢見る「厳格(ストリクト)新聖堂騎士団(テンプラー)」が大ブリテン側の傭兵団になってしまったんじゃ、事実上の創設者のフント男爵の面目が立たないだろ」
「総(そう)帥(すい)ブラウンシュヴァイク侯は、七五年六月に、お膝元のブラウンシュヴァイク市にメイソン大会を招集、フント男爵に中世の聖堂騎士団(テンプラー)と「厳格(ストリクト)新聖堂騎士団(テンプラー)」の連続性の証明を迫って憤死させた」
「余計な邪魔者は始末するというわけか」
「だけど、そんなことをしたら、ブラウンシュヴァイク侯だって、「厳格(ストリクト)新聖堂騎士団(テンプラー)」の総(そう)帥(すい)としての正当性が危うくなりませんか?」
「だいじょうぶ。代わりにシュタークというやつを拾ってきたんだ。そいつの「聖堂司祭団(クレリキ・オルディニス・テンプラリイ)(クレリカート)」とやらは、中世においても聖堂騎士団(テンプラー)よりも上位に存在したとかで、それがブランシュヴァイク公の地位と「厳格(ストリクト)新聖堂騎士団(テンプラー)」の正当性を保証した」
「そいつ、どうせイエズス会残党だろ」
「おそらくね」
「フランクリンは、あくまで独立派で、七五年七月四日に独立宣言を出すが、ワシントン将軍の新大陸独立派軍はわずか一万数千。対する大ブリテン正規軍、傭兵軍、新大陸帰順派軍は、その五倍。これじゃ勝てるわけがない」
「新大陸議会の中心フィラデルフィア市も七七年の秋には陥落してしまいますよね。その後も、よく持ちこたえましたね」
歴史
2020.09.30
2020.10.30
2020.11.18
2021.01.12
2021.03.22
2021.05.25
2021.08.20
2021.08.20
2021.09.09
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。