/ブラウンシュヴァイク侯は、フント男爵のドイツ人大移民団を米国独立弾圧の傭兵軍に変え、ロスチャイルド家を通じてその利益を仏大オリエント社のエジプト十字軍に投資。しかし、その大統領オルレアン平等公は武装市民革命を企て、マインツ独立の失敗、ロベスピエールの独裁、ナポレオンのクーデタと、メイソンリーは迷走していく。/
「宝くじで地元の現金を吸い上げ、巨大建設工事を落とし、経済活性を図った、ということか」
「国会議事堂なんか作って政治議論を沸騰させてしまうより、美術工芸品を祭る神殿を作って静かにさせた方がましですものね」
「大英ミュージアム(博物館)は、奇天烈なガラクタの寄せ集めで、オカルト薔薇十字団(ローゼンクロイツァー)趣味の最後の徒(あだ)花(ばな)だが、シャプタルの作らせたものは、まさに美の殿堂。近代ミュージアム(博物館)の原点なんだ」
「博物館と美術館の違いですかね。神さまや王さまに芸術が取って代わって、そのための教会だか王宮だかを作ることで、街や国家のシンボルにしようとしたんでしょうか」
「でも、わけのわからない理性なんか祭るより理性的だな」
「だけど、エジプト、ぜんぜん関係ないじゃないじゃないですか。やっぱり財宝はなかったんですかねぇ」
「いや、軍隊のほかに総勢二百名もの研究調査団が随行している。ただ、負けイクサだったから、ナポレオンは、なんの成果も持って帰って来られなかった。彼が持ち帰ったのは、これらの美術館の元になる、アレキサンドリア市の図書館の理念だけ」
「でも、宝くじだけで経済復興して、あれだけの大戦争ができるほどの軍資金が調達できたんでしょうかねぇ?」
「うーん……」
『悪魔は涙を流さない』から
歴史
2020.09.30
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2021.08.20
2021.08.20
2021.09.09
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。