/ブラウンシュヴァイク侯は、フント男爵のドイツ人大移民団を米国独立弾圧の傭兵軍に変え、ロスチャイルド家を通じてその利益を仏大オリエント社のエジプト十字軍に投資。しかし、その大統領オルレアン平等公は武装市民革命を企て、マインツ独立の失敗、ロベスピエールの独裁、ナポレオンのクーデタと、メイソンリーは迷走していく。/
「「ミミ」って、ヴェネチアのナポレオン館にカノーヴァの作ったピラミッド型のお墓のレプリカがあった人ですよね」
「父親のフランツ一世に代わって、彼女が次の世代のヨーロッパメイソンのハブになったんだろう。フランツ一世は政治的には恵まれなかったが、奥さんや娘たち、彼を慕ったメイソン仲間がおおぜいいたんだろうな」
「それと、ちょうどそのころ、ワイマール公のところのクニッゲ男爵が、以前に仕えていたカッセル方(ラント)伯のハーナウ宮廷に逗留していた」
「ハーナウ市って、フランクフルト市のすぐ東だよな」
「カッセル方(ラント)伯国は、一六八五年のフォンテーヌブロー勅(ちょく)令(れい)で追放されたフランス人新教徒移民を常備軍にして以来、傭兵で外貨を稼ぐのが国業。方(ラント)伯フリードリッヒ二世も、若者三万人を新大陸の傭兵奴隷として大ブリテンに売りつけて、大儲けしていた。そうやって稼いだ法外な大金を、息子のヴィルヘルムを通じて、フランクフルト市のユダヤ人金融業者ロスチャイルド家に運用させていた」
「そんなところになんでまたクニッゲ男爵が?」
「表向きは執筆出版活動のため、ということになっているが、実質的にはボーテ派のスパイだろうな。七八年には、すでにパリ市「ヌフスール(九美女神)」でのフランクリンの外交活動で、フランスが新大陸新政府と同盟を組んで参戦を準備していたからね」
「あれ? ロスチャイルド家って、そんな大金、どうやって運用していたんですか?」
「あ、よく気づいたね。このカネの大半は、フランスのオルレアン「平等(エガリテ)」公が借り入れ、「フランス大オリエント社(GOdF)」に注ぎ込まれていた」
「えーと、つまり、カッセル方(ラント)伯の傭兵奴隷の代金として大ブリテンが払ったおカネが、エジプト十字軍の準備資金になっていた、ということですね」
「そういうこと」
1782年の国際メイソン大会:ボーテvsブラウンシュヴァイク侯
「でも、エジプト十字軍がうまくいかなかったら、どうなっちゃうんです?」
「ロスチャイルド家も、それを心配し始めた。それで、オルレアン「平等(エガリテ)」公に言って、庭園を開放させ、その廻りにぐるっと建物を作って、そこでテナント業をやらせた」
「悪名高きパレ・ロワイヤル(王立宮殿)か」
「悪名高い?」
「本人が放蕩三昧だったせいもあって、ろくでもない連中ばかりがたむろってきたんだよ。公営風俗街みたいなもんだ。そのくせ、あくまで公の庭園だから、警察も手を出せない」
歴史
2020.09.30
2020.10.30
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2021.08.20
2021.08.20
2021.09.09
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。