/ブラウンシュヴァイク侯は、フント男爵のドイツ人大移民団を米国独立弾圧の傭兵軍に変え、ロスチャイルド家を通じてその利益を仏大オリエント社のエジプト十字軍に投資。しかし、その大統領オルレアン平等公は武装市民革命を企て、マインツ独立の失敗、ロベスピエールの独裁、ナポレオンのクーデタと、メイソンリーは迷走していく。/
革命と国会議事堂建設
「ところが、ここで、やっかいな女が出てくるんだ。ほら、「フランス大オリエント社(GOdF)」、あれ、中心となっていたのは、王室財宝官のランジェ侯爵と政府科学顧問のギヨタン医師、そして、博物学者のビュフォン伯爵。ところが、ビュフォン伯爵は、革命前年の八八年四月に亡くなってしまっていたんだ」
「それで?」
「問題は、ビュフォン伯爵家を継いだ息子。これが、ビュフォン伯爵の広範な博物学研究の中でも最低の生き物と揶揄されるくらいのバカで、その嫁というのが、野望に満ち満ちた町娘、アニェス。うるさい義理の父の大ビュフォンが亡くなったのをいいことに、さっさとバカ息子の小ビュフォンを放り出し、名目上の「フランス大オリエント社(GOdF)」大統領、オルレアン「平等(エガリテ)」公の愛人になって、王位簒奪をけしかけた」
「面倒な時に面倒なやつが出てきたもんだな」
「でも、ワイマール公国のボーデと決裂して、大オリエント社のエジプト十字軍の話はダメになっちゃったんですよね。立憲君主制を建てたって、王様を変えたって、財政破綻は救えないですよねぇ……」
「憲法を作って、議会を開いても、都市貴族への課税承認なんか、どのみち取り付けられないだろうな」
「ちがうんだよ。議会を作ることが重要なんだ、文字通りね。ほら、徴税請負人の壁、あれは、すでに八七年に完成している」
「そのせいで物価が高騰したって、パリの町民が怒っていたんですよね」
「壁のせいというより、その工事が終わってしまったせいで、十万人の建設失業者が出ていた。だけど、大きな徴税請負人の壁ができれば、その内側の古い昔の壁の残骸はいらないだろ」
「昔の壁って? すでにルイ十四世の時代にほとんど撤去したんじゃないか?」
「その一部、大物が残ってたんだよ」
「サンタントワーヌ・バスティーユ(要塞)か」
「そう、西のルーブル・バスティーユ(要塞)は宮殿に改装されたが、それと対で百年戦争期に建てられた東のサンタントワーヌ・バスティーユ(要塞)は、監獄として使われていた」
「国事犯専用で、サド侯爵が中から、ここで人が殺されている! とか、わめき立てていたんで、圧政の象徴とされた、って、聞いていますけれど」
「それは表向きの話。とにかく、あれをぶっ壊して、あそこに巨大な国会議事堂を建てる計画だった。そうすれば、その周辺も、官庁はもちろん、地方議員の事務所だのなんだのができて、ヴェルサイユ宮殿に奪われてしまっていた活気がパリ市に戻ってくる、という、もくろみだ」
歴史
2020.09.30
2020.10.30
2020.11.18
2021.01.12
2021.03.22
2021.05.25
2021.08.20
2021.08.20
2021.09.09
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。