/ブラウンシュヴァイク侯は、フント男爵のドイツ人大移民団を米国独立弾圧の傭兵軍に変え、ロスチャイルド家を通じてその利益を仏大オリエント社のエジプト十字軍に投資。しかし、その大統領オルレアン平等公は武装市民革命を企て、マインツ独立の失敗、ロベスピエールの独裁、ナポレオンのクーデタと、メイソンリーは迷走していく。/
「で、いよいよ自分の出番だ、と」
「三月にデュムーリエ将軍に反革命クーデタを起こさせたんだけど、失敗して、逆に自分が逮捕されてしまった。テロワーニュも、五月に別の女性たちの暴行を受けて発狂。むしろ六月にはジロンド(ボルドー)派より面倒なロベスピエールのジャコバン(ヤコブ修道院)派が恐怖政治を始める」
「そして、十月には王妃マリーアントワネットも処刑、十一月には黒幕のオルレアン「平等(エガリテ)」公も処刑」
「これで、王族はいなくなった、というわけですね」
「愛人の小ビュフォン伯爵夫人アニェスは?」
「いまさら夫の小ビュフォン伯爵の元にも戻れず、貧窮して死んだらしいよ」
「自業自得だな」
「でも、今度は、三六歳のロベスピエールが暴走する」
「例の有名な恐怖政治ですね」
「翌九四年三月、マインツ市陥落の責任を問うて、三四歳のライン革命軍総将軍ボーアルネ子爵と、その後のライン軍を引き継いだ二六歳の気鋭のオッシュ将軍まで逮捕。また、オルレアン「平等(エガリテ)」公の手下だった三五歳のダントンや三四歳のデムーランを四月に収(しゅう)賄(わい)で処刑。これで、ほとんどのライヴァルを始末して、独裁者に成り上がった。さらに、六月、神がいないなら、それを発明すればいい、と言って、あるじのいなくなったチュルリー宮で、カトリック教会に代えて自分が大祭司になり、最高存在の祭典、なんてものを開いている」
「最高存在って?」
「理性のことらしいよ。それまでにも、革命の翌年の革命記念日から練兵場、いまのエッフェル塔の前に、祖国の祭壇なんていうのを作って、変な儀式を行っているけれど、最高存在の祭典は、それを画家の国民公会議長ダヴィットによる派手な演出でさらに仰々しくしたもので、でかい塚の上に変な「自由の木」を立てて、これに礼拝した」
「およそ理性的とは思えないですよねぇ」
「カリオストロ伯爵やオルレアン「平等(エガリテ)」公に代わって、自分が宗教結社の大統領になろうとしたんじゃないのかな」
「この後、七月にはマインツ陥落の責任を取らされて、ライン革命軍総将軍ボーアルネ子爵が処刑」
「あ、その奥さんが、ジョセフィーヌですね」
「三一歳の彼女は、カリブ海のマルティニーク島に砂糖プランテーション(単作大農園)農場を持つ騎爵の娘。セーヌ左岸(南側)、いまの六区のカルム修道院跡の監獄に収監されていた。ここで、隣室の二六歳のオッシュ将軍と恋仲に堕ちてしまう」
歴史
2020.09.30
2020.10.30
2020.11.18
2021.01.12
2021.03.22
2021.05.25
2021.08.20
2021.08.20
2021.09.09
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。