/ブラウンシュヴァイク侯は、フント男爵のドイツ人大移民団を米国独立弾圧の傭兵軍に変え、ロスチャイルド家を通じてその利益を仏大オリエント社のエジプト十字軍に投資。しかし、その大統領オルレアン平等公は武装市民革命を企て、マインツ独立の失敗、ロベスピエールの独裁、ナポレオンのクーデタと、メイソンリーは迷走していく。/
「そうだよ、だからエジプト十字軍なんだ。ロアン枢機卿は、色狂いで王妃に言い寄ったみたいに言われているけれど、ブルターニュのロアン子爵家の縁戚。王室財宝官ランジェ侯爵やマルタ騎士団連絡役のカリオストロ伯爵らは、彼を財務総監につけようとしていた」
「そんな優秀な人だったんですか?」
「当時のマルタ騎士団の大統領はエマニュエル・ドゥ・ロアン」
「ロアン枢機卿の親族?」
「そういうこと。おまけに、彼らはブルターニュの子爵家だから、これまでの遺恨も水に流して、大ブリテンもエジプト十字軍計画に取り込める。すでにフランスは一七〇一年のスペイン継承戦争でスペインを、一七三三年のポーランド継承戦争でシチリア島・南イタリアを、さらに、一七六九年にコルシカ島を手に入れている。そして、七三年に「フランス大オリエント社(GOdF)」ができて、八四年、オスマン艦隊とベルベル人海賊の拠点アルジェ市を叩き潰している。エジプトまでは、もう一歩だ」
「でも、首飾り事件で、ロアン枢機卿の財務総監就任という人事案は、王妃マリーアントワネットに潰されてしまったんですね」
「そんな遠征のために王室予算の削減をもくろんでいる連中の言うことなんか聞くようなタマじゃないからね」
「カリオストロ伯爵の話は、ゲーテの『イタリア紀行』にも出てきますよね」
「というより、八六年九月にゲーテが行き先も告げず、突然にワイマール市からシチリアまで旅に出たのも、カリオストロ伯爵の問題調査のためなんじゃないだろうか」
「いや、カリオストロは、もう用済みだ。ヨーロッパは、もっと大物を必要としていたんだよ」
「それがゲーテ?」
「いや、ナポレオンだろ」
「その前に、自分で名乗り出たやつがいた。オルレアン「平等(エガリテ)」公だ」
「「フランス大オリエント社(GOdF)」の大統領ですね」
「それで、ボーデは一七八七年にパリ市に赴いたが、いい印象は持たなかったようだ」
「窮民救済のエジプト十字軍の話を、たんに自分が王位に就くためのクーデタにすり替えたんだろ」
「そんなところだろうな」
フランス革命前夜
「でも、革命前のパレ・ロアイアル(王立宮殿)も、こんなだったんですかね」
「どうかな。パレ・ロワイヤル(王立宮殿)の周辺にたむろっていたのは、大量の売春婦たちや犯罪者たちだぜ。パレ・ロワイヤル(王立宮殿)の中に逃げ込めば、王宮扱いだから、警察も手を出せない。おまけに、オルレアン「平等(エガリテ)」公は独自に「プロ市民」を養成していた」
歴史
2020.09.30
2020.10.30
2020.11.18
2021.01.12
2021.03.22
2021.05.25
2021.08.20
2021.08.20
2021.09.09
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。