​TBS『報道特集』がおかしい

2025.07.27

経営・マネジメント

​TBS『報道特集』がおかしい

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/報道の自由は、それよりも大きな報道の責任の上にこそ成り立っている。「報道」を名乗る以上、情報源に対して、みずから最善の取材努力を尽くすのが、報道の義務だ。回答が無いなら、連絡の不行き届きを疑って、自分から相手に直接に再確認し、さらには、もっと積極的に自分から相手の下まで質問に出向くのがスジだ。それが、取材というものだ。/

「報道」を名乗る以上、情報源に対して、みずから最善の取材努力を尽くすのが、報道の義務だ。

にもかかわらず、一方的に取材を依頼を送りつけて、相手がその取材依頼を受け取ったかどうかもわからないのに、期限までに回答が無かった、で済ます感覚が、報道人としてまったく理解できない。回答が無いなら、連絡の不行き届きを疑って、自分から相手に直接に再確認し、さらには、もっと積極的に自分から相手の下まで質問に出向くのがスジだ。それが、取材というものだ。

そもそも、一方的な「取材依頼」は、政治家だろうと、飲食店だろうと、相手がだれであれ、まるで裁判所だか税務署だかの督促状のようで、いったいナニサマのつもりか、それほどテレビ局は偉いのか、と、むしろ反感を買うのが当然。かえって、なにもすすんで他人の商売に協力してやる義理も無い、と思うのが、情報源側の感覚だ。ハナから相手をバカにしすぎている。それとも、この番組は、同じことを皇族や外国政府に対してもやるのだろうか。ためしに陛下やトランプに、これで取材依頼を出してみるがいい。

おまけに、これでは、もとより回答が無いことの方を最初から予定して、意図的に、相手が取材拒否をした、という結果を得るための工作で、回答するとまずいことを隠している、というような社会的な印象操作をやろうとした、と勘ぐられても仕方あるまい。

そもそも テレビは、国民共有の公共の電波の特定周波数を独占的に借りて、自分のカネ儲けに使っている。言ってみれば、他の人々の交通をすべて止めて、天下の公道上に自分の店を広げて商売をやらせていただいているようなもの。有料で購入希望者にのみ売っている新聞とはワケが違う。

だから、情報源やコメンテーターが自分の考えを述べるのはともかく、それだって、番組全体で不偏不党、中立公平になるように、最善の配慮が求められる。まして、これらをバランス良く捌くべき司会者だの、現場取材経験の浅いアナウンサーだのが、番組内で自分の私見を述べるなど、論外。それはプロ意識に欠けている。それをやりたいなら、自前で供託金を払って選挙に出て、かってに泡沫候補にでもなるがいい。それとも、テレビを踏み台に、顔と名を売って、いずれ都知事だの、参議院議員だのになるつもりか。

テレビという存在の位置づけの無理解、専横行使は、フジテレビの制作内部での個人的人権侵害問題より、さらに重大なデューディリジェンス(善管注意義務)としての社会的不正、公共財の略奪搾取にあたる虞がある。それも、局内の正社員、プロデューサーなどの管理責任者が関わっているとなると、ただ一番組の問題というより、人事、教育、ひいてはコーポレートガバナンス(企業統括管理)上の経営責任ともなる。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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