五代友厚の大望に学ぶ

2025.04.22

経営・マネジメント

五代友厚の大望に学ぶ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/「機を見て、儲けも出せんもんをアキンドとは呼ばん!」 映画『天外者(てんがらもん)』での五代友厚の言葉だ。維新成金の彼の大阪商工会議所会頭就任に対し、明治維新で財を失った多くの商人たちが非難した。それに対し、彼はこう言い放った、「わしには百年の夢がある! わしについてこいや!」/

「機を見て、儲けも出せんもんをアキンドとは呼ばん!」 映画『天外者(てんがらもん)』での五代友厚の言葉だ。維新成金の彼の大阪商工会議所会頭就任に対し、明治維新で財を失った多くの商人たちが非難した。それに対し、彼はこう言い放った、「わしには百年の夢がある! わしについてこいや!」

天下の大企業を預かり、法外な報酬を受け取りながら、経営を傾かせるヤカラは、いったい何なのだろう。恥を知らないのだろうか。トランプが悪い、政治が悪い、と、そんな話なら、シロウトでも言える。

時代は変わるにきまっている。まして急激な少子高齢化だ。なのに、あいかわらず自動車その他の輸出産業、大量生産にしがみつき、昨日とまったく同じ国際情勢、国内事情が続くことだけを願い祈って、新しい時代の突破口を開こうとする者を呪い罵る。だが、そんなことをしても、時代は止らない。

そもそも、大人数で会議ばかりやっているから、こうなる。経営方針からデザインまで、無難な平均値に落ち着くだけ。しかし、それは結局、シロウトと同じ水準だ。頭抜けて時代に先んじ、多くの人々を率いていくリーダーたるには足らない。過去の功績、社内の抗争で、のし上がっても、百年の先見の明もなしに、いったい企業を、社会を、どこへ導こうというのか。

たとえば、いまだにまだ自動車だと。いまさらF1だ、EVだ、などと言ったところで、もはやその限界成長率は知れたもの。つまり、その成長は、かけた努力に見合わない。そもそももっと巨視的な文明論的な視点に立てば、四大文明の以来の車輪の時代そのものが終わろうとしている。それより小さく、蒸気機関車を考えれば、このことは容易にわかる。あれがダメになったのは、大量の水と石炭を積んだ高圧の蒸気機関車が重すぎて、線路が無いと地面にめりこんでしまうから。線路の敷設維持コストが莫大すぎて、軽量内燃機関の自動車に太刀打ちできなかったから。

じつは同じことが自動車にも言える。目に見える車ばかり見ている視野の狭い連中にはわからないだろうが、社会全体から見れば、自動車は道路が無いと走れないのだ。だから、自動車の性能は、自動車自体よりも、じつは社会の道路の性能に依存する。しかし、もはやこれ以上、道路の開発維持コストが、世界中どこも社会的に捻出できない。それで、世界の先進企業は、道路無しでも、どこでも走れる二本足、四本足の研究へ取り組んでいる。

いまだに考えも無しに自由貿易なんていう御題目を唱えて続けている時代錯誤の守旧派経済学者たちに乗せられている連中も困ったものだ。帝国主義の植民地分捕り合戦の時代には、たしかに保護貿易は戦争を誘発する危険要因だった。そして、すこし前までは、自由貿易によって、生産者として、消費者として、より安くより良いものを国際的に融通しあって、ともに繁栄する、という理念があった。しかし、既存技術が国際的に平準化し、品質競争が成り立たず、価格競争のみとなると、自由貿易の方が他国の搾取経済にならざるをえない。おまけに、敗退国はもちろん、勝利国でも、価格競争ゆえに、実際に働く人々をより貧しくする。だから、民主主義に立つかぎり、少数勝者の利益増進よりも、国民多数者の利益保護に、どこの国も政治が方針転換するのは必至だった。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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