ビジネスパーソンの働く環境は、プールから外洋まであり、外洋で泳ぐ、いわゆるグローバルエリートは、解決策は外にあると考え、外にいる本物の役者たちと対話を重ねていると紹介しましたが、プールで泳いでいる人が外に出て、本物の役者たちに出会い、付き合っていくためには、どのような価値基準を持ち、どのような力を鍛えていけばよいのでしょうか。
ビジネスパーソンの働く環境は、プールから外洋まであり、外洋で泳ぐ、いわゆるグローバルエリートは、解決策は外にあると考え、外にいる本物の役者たちと対話を重ねていると紹介しましたが、プールで泳いでいる人が外に出て、本物の役者たちに出会い、付き合っていくためには、どのような価値基準を持ち、どのような力を鍛えていけばよいのでしょうか。
尽くしたい人間に出会う旅
本物を見極める直感は、会話の最初の一瞬に現れることがあります。
向き合った瞬間に、「この人のために自分は何ができるだろうか」と考える人と、「この人は自分に何をしてくれるのだろうか」と考える人がいます。つまり、ギブから対話を始める人と、自分にとって有益かどうか、相手を値踏みしながら対話を進める人がいる。この違いは、会って話すうちに何となく感じ取れるものです。人と会うときに、自分にとって「本物かどうか」を見極めるうえで、この直感を大切にしてほしいと思います。
私自身は、ギブから始める人にこそ信頼を寄せてきましたし、常にギブから始めようと考えて行動してきました。結果として、ギブから対話を始める人とのご縁が、一番大切なものになっていきました。相手のギブマインドを感じ取る直感を大切にすることは、「どんな人に自分の時間やエネルギーを使いたいか」を見極めることにもつながります。私は、ビジネスは「尽くしたい人間に出会う旅」だと考えています。
西郷隆盛は、「うまくいかなかったときは、常に己の誠の不足を顧みよ」と言っています。自分は尽くし切れていたか、自分の利己的な思いが尽くす力を削いでいなかったかと反省するこの言葉が、私はとても大事だと考えています。好きな人のためには、「何とかしてあげたい」という気持ちを強く抱くものです。性別や年齢を超えて、「この人のためとなると、なぜか熱くなってしまう」と感じられる相手こそが、自分にとっての「本物の人」なのだと思います。
自分にとって「本物の人物」と呼べる方に出会い、師事することになったとしたら、そのとき大切なのは、自分がどこまで尽くしきれるかということです。
私にも、まさにそのように自分を育ててくださった上司がいます。その方は常に、「俺は村上のために何をしてやったら一番いいのか」という姿勢で私と向き合ってくれました。そのような姿勢を受け取った側としては、「この恩をどう返していけばよいのだろうか」と自然と考えるようになります。現役時代は証券会社のトップとして、私の面倒を見る余裕もないほど多忙を極めていましたが、リタイア後はさまざまな上場企業の役員や社外取締役を務めながら、「村上の力を自分の顧問先のために借りられないか」と、顧客のことも、私のことも常に考えてくれる。そんな「本物の人物」に師事し、師匠として崇めて生きてこられて、今なお一緒に仕事ができていることに、感謝してもしきれないようなご縁があるのです。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
