​ZEN大学のインパクト:新時代の通信制

2024.10.28

ライフ・ソーシャル

​ZEN大学のインパクト:新時代の通信制

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/この大学が正式認可になった場合、大学勢力図のバランスを劇的に変えてしまうかもしれないが、どこの既存大学も、あまり危機感が無いのが恐ろしい。転出学生も少なからず出て来るだろう。既存大学も、全日通学制ならではの魅力を改めて考えないと、ネット主導の国際社会時代に、もっとも未来からも、若者たちからも遠い存在になりかねない。/

コロナでの閉鎖が大学を大きく変えた。9月に保留とされた角川系の通信制大学が追加認可される見込みだとか。とにかくいきなり規模がでかい。当座の定員は減らされたが、いずれ予定の2万人大学、ひょっとするとそれ以上になるだろう。全日通学制に附属する通信制ではなく、通信制のネイティヴで構想されているから、キャンパスなどの固定資産のムダが無い。

先行する放送大学は、実質的には東大系教授のアーカイヴで、だれのための大学なのか、このネット時代に、方針も方法も、もはや時代錯誤。また、ソフトバンク系のサイバー大学もあるが、IT経営が中心。これらに対して、ZEN大学は、出版から映画、ネットまで、コンテンツ産業を幅広く手がける角川系だけあって、若者に人気のクリエイティヴな領域をメインとしている。くわえて、すでに同じ角川系の通信制N高校等在学生が3万近く、これもいずれ6万に拡大するとされており、この少子化の中、将来的にも入口経営の目論見が立っている。また、角川グループだけでなく、日本財団やパソナ等も支援しており、インターンシップを含め、出口戦略も固い。

先に保留、先送りになった理由は、わからないでもない。表向きは夏に角川系がサイバー攻撃を受け、情報流出をしたとかしないとかの問題だろうが、ネット通信制学校については、高校ですでに7年の実績がある。むしろ文科省としては、これが大学勢力図のバランスを劇的に変えてしまうことを危惧しているのだろう。が、どこの既存大学も、あまり危機感が無いのが恐ろしい。

一般の大学を経営から見た場合、あまりに資本回転率が悪すぎる。学期中の昼の数時間しか経営しない学食と同じようなもの。街中でないと学生が集まらないが、街中に集めたところで、ランチ、ディナーで二回転させている飲食店ほどにも資産が活用されていない。また、昔、教授たちは、それぞれに個性的で、人間的な魅力があり、この先生について学びたいという学生が集まったが、今日の大学は、システム化されたカリキュラム主導で、体系著書一つない落ち武者学者、何十年も昔を回顧する枯枝実務家だらけ。未来に生きる若者を惹きつける要因とはなっていない。

学生の性格も生活も大きく変わってきている。大人数を同じ時間、同じ場所に集めて、一斉に同じ話を聞かせる、というのは、古い団塊世代のマスプロ教育の発想だろう。受験科目の多様化細分化によって、予備校ももはや一斉講義が成り立たなくなり、すでに東進などは、個々の学生のオンデマンド講義配信に切り換え、それぞれの進度に合わせ学習を進め、また、自由に復習し、途中テストで成果確認するプログラムを確立している。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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