会社とは何か:法人の存立根拠

画像: photo AC: はむぱん さん

2017.08.30

経営・マネジメント

会社とは何か:法人の存立根拠

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/教科書では、株式会社は、物的な営利の社団法人、と教えられる。しかし、その実際は、むしろ意思無能力な財団であって、その後見人としての支配権と正当性が、歴史的、社会的に揺らぎ続けている。/

 このように、社会通念上、そして、法律上も、「表見代表」の責任が及ぶことにおいて、「正社員」は、まさに「代表」として、雇用される「株式会社」と一体性を持つ。それゆえ、これは、集団が独立の人格として成員から区別される〈社団〉ではない。つまり、もう一度、全体を整理するならば、通常、経営学などで言われているように、企業法人は、有機的な〈組織〉であるから、という理由によって直接に、従業員を含む統一人格性が認められるのではなく、ただ、有機的な〈組織〉であることによって、すなわち、「取締役会」以下の連鎖カスケード的な監督権・管理権の委譲によって、その末端に至るまで代理権が行き渡っていると、善意の第三者に推定させてしまうことによって、ここに、「表見代表」が成立し、このために、一般的に、「正社員」の一体性が、社会通念上、成り立っている、ということになってしまうのである。

 しかしながら、この一体性は、法律的責任として発生するのであって、法律行為以前にある一体感とは区別されなければならない。すなわち、「正社員」であることが「表見代表」の権利と責任を派生してしまうことから、「正社員」が、事前に、自分が雇用される「株式会社」に対して一体感を持つとしても、この一体感に実体性はない。というのも、そもそも「取締役会」の決議としての意思を別として、「株式会社」は、もとより意思能力を欠いており、ましてや、「従業員」においては、たとえ「正社員」であろうと、「従業員」全体として意思の統一が図られる制度が、「組合」よりもなお欠けているからである。「従業員」は、まさに「組織」であり、連鎖的に構成されているものであって、「取締役会」とさえも、一般の「従業員」は直接に意思疎通しているわけではない。それゆえ、個々の「正社員」は、一方的な「取締役会」の発表や上司からの命令や伝聞によって、「取締役会」の意思、したがって、それに代表される「株式会社」の意思を、個別に推量することはできるが、これは一般の他者の意思を推量することに等しい。ここから、「株式会社」は、やはり「従業員」の「組織」とも独立の人格であり、また、「従業員」は、監督権・管理権の代理委譲によって連鎖する組織を構成するとはいえ、やはり個別に「株式会社」の意思を推量するにすぎず、ここに〈社団〉としての法人格を認めるべき「従業員」の総体としての意思能力も行為能力も存在しない23。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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