会社とは何か:法人の存立根拠

画像: photo AC: はむぱん さん

2017.08.30

経営・マネジメント

会社とは何か:法人の存立根拠

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/教科書では、株式会社は、物的な営利の社団法人、と教えられる。しかし、その実際は、むしろ意思無能力な財団であって、その後見人としての支配権と正当性が、歴史的、社会的に揺らぎ続けている。/

 第二に、そもそも「法人」一般において、債務完済の〈行為能力〉がない場合、裁判所から「破産」が命じられ(『民法』70①)、「破産」は、ただちに「解散」の事由となる(『民法』68)。これは、「財団法人」の場合は当然であろうが、「社団法人」の場合には奇妙と言わざるをえない。なぜなら、「社団法人」は、たとえ経済行為の〈行為能力〉がないとしても、〈社団〉として実体を持ち、経済行為能力以外の方法によって、「社団法人」としての目的の活動を遂行することが可能であるからである19。そして、債務完済の〈行為能力〉がないとして「破産」に至ったとしても、自然人であれば、その後の経済行為の「行為能力」に関して制限されるのみで、存在そのものまで否定される、すなわち、死刑になるわけではない。にもかかわらず、〈法人〉が一般に「解散」させられるのは、〈財団〉か〈社団〉かを問わず、もとよりその法人格が、事実上、経済行為を行うための便宜に限定され、経済行為を行わない、もしくは、支払不能や債務超過などにより経済行為の〈行為能力〉を持たない場合、その法人格そのものは、その目的たる活動の有無の如何にかかわらず、その取得も保持も、法律的な意味を持たない、したがって、〈法人〉そのものが存在しない、とみなされるからではないのだろうか。

 さらに、第三に、「破産」において、その所有財産は、一般に、本人とは別の「破産財団」とみなされる。「法人」の「破産」の場合、元来の「法人」が「事実上の法人」となり(『破産法』4)、以前と同様に後者の「破産財団」を所有するが、この「事実上の法人」は、すでに経済行為に関する法律的な「行為能力」を持たないために、「破産管財人」が後見して代表するということになる。このように破産者の財産を〈財団〉とするのは、もとより債務超過の虞がある状況で、財産が個別に処分されて一部の債権者のみに不利益が集中することを予防し、現有財産を公正に「配当」するためであるが、「破産」の以前においても、「法人」、とくに「株式会社」は、この「破産財団」と同等の〈公正配当機能〉を持つものではないのだろうか。すなわち、ある企業において、多様な協力者が、それぞれの協力を事由として、営業の結果である利益に対し随時に自益権を主張し行使するとき、その配分の公正は期待しがたい。それゆえ、企業は、これらに随時個別に利益を還元するのではなく、「株式会社」という「資産財団」としていったんプーリング[pooling]を行い、その上で、労働賃金や借入金利や株主配当としての制度に基づき、公正な「配当」を行うのではないか。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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