組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。
生活・人生の充実が、本当に仕事にフィードバックされるかどうかが疑わしいという人もいるだろうが、それは経営者を見てみれば明らかである。ほとんどの経営者は広く交流を持ち、自分の時間もしっかり確保し、多様な学びや気づきや情報を得ている。じっと会社に閉じこもって、黙々と作業をしているような人はいない。そして、そのような充実した生活の中で得たことが、明らかに仕事にフィードバックされている。経営者を見れば、バリューライフがあるからこそバリューワークが生まれるということがよく分るのである。これは何も経営者に限った話ではない。経営者が特別な人間であるという訳ではない。「バリューライフがあって、バリューワークが生まれる」というのは、誰にでも当てはまる原則である。付け加えれば、ワークライフバランスも「人生や生活を充実させることで、より価値の高い仕事がなされるようになる」と理解したほうがよい。
バリューワークを生み出し、バリューワーカーを多く育てていくために、人事部は「事業環境・事業計画に合わせて、組織と人材を最適化する」ことに加え、「従業員の人生の成功を支援する」ことを役割として認識すべきだ。それには「バリューライフがあって、バリューワークが生まれる」というパラダイムへの転換が求められる。
【つづく】
新しい「日本的人事論」
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。