組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。
キャリアは、積み重ねてきた仕事の「価値」と「量」を乗じたもので評価される。乗じたものであるから、価値の低い仕事を沢山やっても高い評価はなされない。従って、キャリアを考えるときは、その仕事の価値に着目することが重要になる。
価値の高い仕事をするには、社会や顧客の変化に合わせ、顧客や関係者のニーズに焦点を当て、「自分がやっている仕事は、顧客や関係者にとってどのような価値があるのか」を常に考えながら、高く明確な目的を持って取り組む必要がある。過去に価値の高かった仕事であっても、いつまでもそれが同じ価値を持ち続けることはないからだ。
また、価値ある仕事に時間を割くためには、価値の低い仕事を止め、仕事の価値を下げてしまっている要因を排除することも重要である。“バリューワーク”に時間を割くには、“ノン・バリューワーク”を発見・停止するとともに、旧く機能しなくなった組織・ルール・仕組み・慣習・悪癖などを発見・変更・排除しなねばならない。
今回は、価値ある仕事をしている人(バリューワーカー)は、どのような要素を持っているのか(どのような要素を持つ人材が、バリューワークを実践しているノか)について考えてみたい。
まず、もっとも重要なのは“観(パラダイム)”だろう。物事への見方、考え方、向き合い方が優れていなければならない。例えば、「仕事とは、自らの能力や可能性を開花させるためにあるものだ」という仕事観の人と、「仕事とは、自らの時間や労力を切り売りしてお金をもらう手段である」という仕事観を持つ人では、その仕事の価値は異なるはずだ。「人が集まってシナジーを創出するのが、会社の目的だ」という会社観の人と、「安定してつつがない人生を送るために、会社の決まりや組織の論理に従おう」という会社観の人も、仕事の価値は違ってくる。ほかにも時代観、人間観など様々な物事に対する見方が、それぞれの人の仕事の仕方、経過、結果に影響を与える。バリューワーカーには、優れたパラダイムがあるはずだ。
次に、“誠実性”“倫理観”である。当たり前だが、何をやってもいいから儲ければよいという訳ではない。社会や顧客の立場に立ち、長い目で見た事業の継続性を鑑みながら、あらゆるステークホルダーと調和的に進めるのが事業の本来のありようだ。法令を遵守していればいい、ルールに違反していなければいいというレベルではなく、多様な立場の人から誠実で、節度ある事業・業務であると認められる必要がある。違法でない状態がコンプライアンスであるという認識は古い。現代では社会の様々な視点に配慮が行き届く広い視野と、それを前提とした誠実性が重要である。バリューワーカーは、コンプライアンスを社会適合性であると理解している。
新しい「日本的人事論」
2018.02.05
2018.02.15
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2018.04.07
2018.04.23
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2018.06.16
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。