フリーメイソンの成立事情を巡る対話:レン・ニュートン・ラムゼー

2018.01.28

開発秘話

フリーメイソンの成立事情を巡る対話:レン・ニュートン・ラムゼー

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/フリーメイソン(自営石工)のブルーロッジは、中世、さらには古代にまで遡る。だが、近代になって、各地のロッジを統括し、政治利用しようとするゼネコン連中や投資家連中が、その上にレッドロッジ(グランドロッジ)を作り、その支配権の争奪を始める。/

「こういう状況で、三六年には、むしろジェームズ三世をブリテン王国に迎え入れようとするジャコバイトの「スコットランド大ロッジ」もできる。そして、ラムゼーは、三七年、騎士団大広報官ラムゼー著『フリーメイソン入会式での講話』なんていうのを出版する」「清教徒の国王に反意の無いことを示す国教徒のロンドン大ロッジに対して、アイルランドやスコットランドでは、露骨にカトリックでジャコバイトの大ロッジとは」「ここからが引き抜き合戦だよ。ジャコバイトが支持するスチュワート家が贅沢好きで放漫財政なのは、昔から有名だった。そのうえ、背景には、イングランド・スコットランドを、アイルランドとともにカトリックに戻したい法皇が絶対担保付きの出資者として付いている」「つまり、当てにならない政府財政に依存しているロンドン大ロッジなんかより、ジャコバイトのアイルランドやスコットランドの大ロッジに入った方が、手っ取り早く儲かるぜ、って話ですかね」

「ラムゼーは、聖堂騎士団って、フランスとスコットランド、ポーランドを繫ぐのに都合のいいネタだと思ったんだろうね。ところが、まぬけなことに、この講話が出版されると、スコットランド大ロッジの方が、ラムゼーの聖堂騎士団末裔説を、ウソっぱちだ、と、完全否定してしまった」「いや、だって、石工の団体なんだから」「スコットランド本国の大ロッジのメイソンは、ジャコバイトとはいえ、平民の中小企業のおやじみたいな連中だ。ラムゼーのことは、昔から知っている。パン屋の小せがれが、インチキ貴族に成り上がって、なにバカ言ってんだ、って。言って見れば、メイソンなんて、もともと飲み屋で建設会社のおやじたちが仲良く飲み食いしてただけなのに、その儲け話に一枚かもうと寄って来た部外者たちみたいなもの。最初のうちはエプロンだのハンマーだの、今風に言えばヘルメットに首タオル、ロングニッカに安全靴みたいな建設業者独特のかっこうをして、連中に溶け込み、仕切談合の儀式につきあっていたけれど、そのうちに、自分たちは現場労働者じゃない、騎士だ、貴族だ、なんて言い出して、組織を乗っ取ろうっていうんだから、そんなの、許せるわけがない」「そりゃ、みんな、怒るでしょうね」

「ところが、奇妙なことが起こるんだ。フランスで聖堂騎士団と言えば、それは、国王と教会の悪辣な陰謀によって壊滅させられた組織のこと。それがメイソンとして復活したのであれば、それこそが反国王・反教会の拠点にちがいない、って。それで、フランスの自由主義貴族や新興企業家、ユダヤ人やトルコ人、百科全書派のディドロのような啓蒙主義の無神論者など、反国王・反教会の連中がごちゃごちゃ集まって来て、三八年、一気に「フランス大ロッジ」ができてしまった」「フランスのメイソンたちを集めて、絶対王制主義のジャコバイトがカトリック教会と組むつもりだったのに、聖堂騎士団なんて言ったせいで、王制にも教会にも反対の連中が集まってしまったわけ?」「そういうことだな。自分がラムゼーにフランス大ロッジを作らせたくせに、ローマ法皇クレメンス十二世は、この予想外の結果に驚いて、すぐメイソン禁止令を出し、メイソンすべてを異端として破門にした」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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