フリーメイソンの成立事情を巡る対話:レン・ニュートン・ラムゼー

2018.01.28

開発秘話

フリーメイソンの成立事情を巡る対話:レン・ニュートン・ラムゼー

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/フリーメイソン(自営石工)のブルーロッジは、中世、さらには古代にまで遡る。だが、近代になって、各地のロッジを統括し、政治利用しようとするゼネコン連中や投資家連中が、その上にレッドロッジ(グランドロッジ)を作り、その支配権の争奪を始める。/



ルター二百年目の大ロッジ結成

「逆もまた真だよ。女王アンも一四年に、跡継の無いまま亡くなってしまって、かといって、王位継承法でもうフランスに亡命中の、ジェームズ二世末子、ジェームズ三世二六歳が継承することはできず、曾祖父のジェームズ一世まで戻って、例の三十年戦争のきっかけになった冬王妃の孫のジョージ一世が即位」「孫ったって、冬王妃の娘が嫁いでいたのは、カルヴァン派ブラウンシュヴァイクハノーファー選帝公家で、ジョージ一世は、英語ができなかっただけでなく、ロンドン市にも居着かなかったっていう不在王でしょ。一方、ヘンデルは、ハノーファー選帝公の宮廷楽長だったのに、一二年からロンドン市に居着いてしまって、帰国命令も無視していたら、ジョージ一世の方がブリテン王としてロンドン市に来ることになって、あわてて『水上の音楽』を作って歓迎したとか、しないとか」

「なんにしても、ブラウンシュヴァイク公家のジョージ一世は、カルヴァン派だ。ルター派のプロシア選帝王フリードリヒ一世やヘッセンカッセル方伯カールと並ぶドイツ新教徒の中心。反カトリック反フランスで、スペイン継承戦争には、神聖ローマ帝国軍の元帥として最前線で戦っている。そんなのが、ブリテン王国の王になったものだから、ブリテンのカトリック連中は、フランスの支援を受けて、その引きずり落としを画策」「つまり、ジェームズ三世を王位に就けようとするジャコバイトがまたぞろ、うごめき始めたんですね」

「困ったのが、一般の国教徒。プロテスタントの清教徒ではないとはいえ、カトリックのジャコバイトのテロリストなんかと間違えられたくない」「あ、それでメイソンか」「一七一七年六月二四日、木曜、洗礼者ヨハネの日の夜、聖ポール大聖堂広場のエールハウス「ガチョウに焼き網」に、他の三つのロッジのメンバーを併せて総計七〇〇名も集まり、「ロンドン大ロッジ」を発足させた」「自主的に?」「創設者は、レン卿、八五歳」「大火後のロンドン市の再建を主導したレン卿が言い出したとなれば、だれも異論はないでしょうね。でも、八五歳で?」「実際の中心は、デザギュリエ、三四歳。王認協会の事務長」「つまり、黒幕は、王認協会会長のニュートン?」「ほら、さっき話したように、ニュートン本人は、横並びに平等なメイソン親方の一人になんか、なりたくなかったんだよ。それに、彼はもともと国教徒ではなく、プロテスタントのユニテリアンだったから、わざわざ大ロッジに身分保証してもらわなくても、カトリックのジャコバイトと疑われる心配もなかった」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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