フリーメイソンの成立事情を巡る対話:レン・ニュートン・ラムゼー

2018.01.28

開発秘話

フリーメイソンの成立事情を巡る対話:レン・ニュートン・ラムゼー

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/フリーメイソン(自営石工)のブルーロッジは、中世、さらには古代にまで遡る。だが、近代になって、各地のロッジを統括し、政治利用しようとするゼネコン連中や投資家連中が、その上にレッドロッジ(グランドロッジ)を作り、その支配権の争奪を始める。/

「ただ、ニュートンが頭がおかしくなってしまっていたからね。そもそもすでに九九年に超高給取りの造幣局長官になっていて、毎年、使い切れないほどのカネが入ってきていたから、〇一年には大学も辞めてしまっているし、〇三年に王認協会の会長になり、〇五年に念願の騎士に叙せられ、〇七年に経度委員会委員長。どのみち家族もいないのに、なんのためのカネ儲けなんだか」「でも、あって困ることはないでしょ」「いや、回りが困るんだよ。本人が一七一〇年にウェストミンスターのオレンジストリートに豪邸を新築して、部屋中を薔薇色のビロードで飾り立てた豪奢な生活をするだけならともかく、同じく一七一〇年には、王認協会も、グレシャムカレッジから引っ越して、その南のクレーンコートに独自の建物を新築。路地の奥の入口では、銀の紋章つきの儀仗を持つ衛兵まがいが出迎え、会員は長テイブルの両側の指定席に着き、その上座に会長ニュートンが神々しく現れるや、会場は静まり返り、彼の開会の宣言が厳粛に響きわたる、というようなありさま」

「クレーンコートの王認協会館は、一七八〇年に協会がサマセット館に移って壊されてしまいましたけど、ニュートンの豪邸の方は、よく知ってますよ。ナショナルポートレートギャラリーの裏で、今、図書館ですよね」「そうそう」「こう見えても、私も美術史家ですから」「あぁ、そうだった。すっかり忘れていたけど」「あの家、典型的な新古典主義のメイソン建築ですよね。正面の窓が三つ、それが三階」「あれとそっくりの建物が、ヘッセンカッセル方伯のオランジェリーの西側にあるよ。これもカール方伯が建てたんだが、ニュートンハウスと同じ大きな建物なのに、中は総大理石張りで、回廊の中心に小さな水浴槽があるだけなんだよ」「奇妙ですね。ロトンドになっている山上の八角城と同じような実験装置でしょうか」「大理石は、装飾ではなく、電気的な絶縁体だろう。回廊に電線を巻いてコイルにすれば、巨大な誘導器になる」「ニュートンハウスも、中は同じような実験装置になっていたんでしょうかね」「その可能性はあるよ。それくらいのものを自腹で自宅に造れるくらい、カネを持っていたからね」「じゃあ、ニュートンもメイソン?」「それは微妙だね。ニュートンは、自分でソロモン神殿の設計図の復元なんかやっているけど、自分はメイソンみたいな労働者連中とは違う、あくまで騎士なのだ、と思っていたんじゃないかな」「育ちに劣等感を持っている人は面倒ですねぇ」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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