/フリーメイソン(自営石工)のブルーロッジは、中世、さらには古代にまで遡る。だが、近代になって、各地のロッジを統括し、政治利用しようとするゼネコン連中や投資家連中が、その上にレッドロッジ(グランドロッジ)を作り、その支配権の争奪を始める。/
「その戦争捕虜から、イングランドでペストが大流行。おりしも、ロンドン市は六四年冬から六五年夏にかけての大寒波、大熱波。市内だけで七万人の疫病の死者を出した。くわえて、六六年秋にはロンドン大火で「シティ自治区」を焼失。グランドツアーに出でていたレンが戻ると、六九年、三七歳で王室建築局測量設計師長になって、オックスフォード以来の親友の実験家フックとともに、ロンドン大改造を始める。このとき、大火を理由に、一般家屋も木造を禁止。教会や城塞の建築の減少で仕事にあぶれていたブリテン中の自営メイソン(石工)がロンドン市に集まり、市民も、インドや新大陸の貿易で得た富を建設に注ぎ込んだ。こうして、現場作業の複数のフリーメイソンロッジに、王認協会というロイヤルサヴェイヤーロッジが乗っかったんだよ」「ほら、やっぱり、ガーター騎士団由来だから、ブルーロッジの連中は職人でも、レッドロッジのメンバーは騎士なんですよ」「はいはい。ま、そういうことかもね」
アヘン中毒のニュートン
「疫病も、火事も、建設も、ぜんぶ仕組まれたみたいな話ですよねぇ」「当時から、そういうウワサが絶えなかったんだよ」「王認協会は疑われなかったんですか?」「怪しいと思われても、王政復古直後の王認協会だからね。それに、焼失した「シティ自治区」は民間に任せ、自分たちは西郊外、旧教修道院領のウェストミンスター地区の開発から手がけていった」「巧妙ですね」
「ただ、数学者のバローがね」「なにか問題が?」「グランドツアーで、彼は、イスタンブールから面倒な習慣を持ち帰ったんだ」「?」「チェーンスモーカー、と言っても、新大陸のタバコなんかじゃない、中東のアヘンだ」「それは、まずい」「その後ケンブリッジ大学に戻ったんだけど、六七年、弟子の二人が階段から落ち、もう一人も発狂。残ったのは、赤貧給仕学生上がりの二五歳のニュートンだけ」「呪われているみたいですねぇ」「いや、みんな、アヘン中毒だろ。バロー自身、六九年には、教授のポストを二七歳のニュートンに譲って事実上の引退。その後、四七歳で早死にしてしまう。一方、ニュートンは、七二年一月、三〇歳で王認協会の会員になった。その後、『プリンキピア』、いわゆるニュートン力学大系をまとめていくが、教授としてはオカルトマニアの支離滅裂。学生も寄りつきもしない」「オカルトというより統合失調が疑われていますね」「いや、やつもおそらく恩師譲りの重度アヘン中毒だ。パイプが手から離せず、姪の指を樹脂と間違えて刻もうとしたくらい、幻覚がひどかった」「ろくに仕事しなくても、大学はクビになりませんからね」「それ、イヤミか」「いえ、自虐ですよ」
歴史
2017.08.07
2017.08.12
2017.10.04
2017.10.23
2018.01.28
2018.02.17
2018.07.10
2018.07.17
2018.07.24
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。