/アメリカの中でも、ハロウィンは、もともとかなり特殊な文化に発している。すなわち、キリスト教の彼岸観に、アイルランド的ドルイド教と黒人奴隷的ブードゥ教がくっついたもの。これは、内陸中西部でこそ生まれたものであり、まさにそこにウォルト・ディズニーと彼の仲間である「ドモレイ」たちは育った。/
第一次世界大戦中に作られたために、先行するボーイスカウトや、後のヒットラーユーゲントに似て、国粋主義的教育団体としての色合いが強い。このことは、宗教はもちろん、国籍も問わない本来のメイソンリーとは、決定的に異なっている。
名誉メイソンのミッキー
おもしろいことに、このドモレイ出のウォルト・ディズニーは、彼の作ったミッキーマウスを、自分の息子のように、このロッジに入れようとし、ロッジはミッキーマウスを名誉会員にすることにした。したがって、ミッキーマウス自体が名誉メイソン、というわけだ。
このころから、ミッキーマウスは、かつての手に負えないいたずらっ子から、学級委員長のような、みんなのまとめ役へと変わる。そして、国際親善で海外に行くときも、ミッキーマウスは、当然、この「ドモレイ」の肩書を内々に使っただろう。
とはいえ、メイソンというのは、べつにオバカな陰謀論者が騒ぎ立てるような悪の組織でもなく、一枚岩でもない。それどころか、そこには、メイソンリー同士のややこしい対立関係が複雑に絡み合っている。そうでなかったら、独立戦争だの、南北戦争だの起きたりしなかった。
そして、ミッキーマウス、というか、ウォルト・ディズニー、そして、ディズニー全体の「無国籍風」の思想が問題なのは、それがかならずしも真の無国籍ではなく、かなり特異な「ドモレイ」というメイソンロッジのもの、アルルカンの死と再生の物語をつねに隠している、ということだ。
そのうえ、ウォルト・ディズニーは、労働組合と対抗するため、当初、ディズニーランドの従業員で、「ディズニーランド・メイソニック・クラブ」を組織させていた。また、これとは別に、他のロッジの高位者接待用に「33クラブ」を作った。しかし、これは、いまやディズニーランドのスポンサーに開放されているが。
ブードゥ教とドルイド教
ウォルト・ディズニーに先行するマーク・トウェインを読むと、当時の中西部が、人口的には黒人の方が圧倒的に多く、その独自の文化が、支配側の白人にも強い影響を与えていたことが知られる。とにかく彼らはみな迷信や霊視を好んだ。『ハックルベリー・フィンの冒険』でも、黒人ジムはどっぷりオカルト的で、ハックもそれに引っ張られて、冒険に振り回されることになる。
それはいわゆるブードゥ教だ。このブードゥ教というのは、純粋にアフリカ的な呪術ではなく、カリブ海と中西部アメリカで熟成したもので、キリスト教とも親和性がある。この根底にあるのは、精霊的な多神教の世界観で、教義らしいものがあるわけではない。
歴史
2020.06.24
2020.08.27
2020.09.25
2020.09.30
2020.10.30
2020.11.18
2021.01.12
2021.03.22
2021.05.25
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。