/最近は火星でもクリスマスをやるらしい。しかし、さていったいなんのプレゼントを持っていったらいいのやら。/
「コンニチハ、ハジメマシテ。オ目ニカカレテ光栄デス。ナニカ用デスカ?」
「いや、よかった、地球語ができて」
「オソレイリマス」
「いやいやいや、そんな地球語を使われると、こっちがおそれいりますよ」
「私ノ地球語、変デスカ?」
「いや、そんなことはないけれど」
「私、地球ニ来タクテ、向コウデ熱心ニ地球語ヲ学ビマシタ」
「ああ、なんかはやってるらしいですね」
「エエ、地球ハ大人気デス。地球ハマダ自然ガ豊カニ残ッテイマス」
「あ、そうなの、うれしいなぁ」
「いや、それ、原始的で遅れてる、っていう意味じゃないの?」
「イヤ、自然ハ大切デス。自然ヲ守ル地球人ハ偉イデス」
「うーん、まだいろいろ文化的な誤解もあるようだけど」
「いや、それよか、あれ」
「あ、そうだ、ねぇ、これなんだけど」
「子ドモノ手紙デスカ。火星語デスネ」
「そうなんだよ。それで、うちの大将がそっちに行くことになったんだ」
「アア、事情ハワカリマシタ。ソレデ私ガさんた様ヲオ迎エニ参サセテイタダイタワケデスネ」
「まあ、そうなんだけど、これ、なんて書いてある?」
「さんたサン、火星ニ来テクダサイ。楽シミニ待ッテイマス。チョット字ガマチガッテイマスガ、ソウ書イテアリマス」
「それだけ? なにかほしいものとか、書いてない?」
「イエ、ソレシカ……」
「うーん……」
「あのさ、じゃ、一般論として、火星の子どもって、どんなものが好き?」
「エー、ソウデスネ、ぬじゃめっとらトカ、ほむかっとむトカ、ソンナノガ、今、子ドモタチニ人気デスカネ」
「えーと、ヌジャメットラって……」
「いやいや、聞いたのがまちがいだった。どのみち、そんなもの、ここに無いよ」
「まぁ、そうだな」
「あのさ、クリスマスってわかる?」
「エエ、さんた様ガぷれぜんとヲクレルトカイウ地球ノ祭礼デスネヨネ。私ガオ迎エニ参ッタノガ、ソノさんた様デスヨネ」
「うん、まあ、そんなところなんだけれど。それで、サンタさんだけじゃなくて、火星の子どもたちにプレゼントも載せてってほしいんだけど」
「エエ、カマイマセンヨ」
「で、なにがいい?」
「エ? サア…… 私モ地球ニ来タノハ初メテデ、地球ニドンナモノガアルノカ、ヨク存ジアゲテオリマセン」
「あー、そうか、そうだよね……」
「……ナンニシテモ、さんた様ガイラッシャッテクダサルトイウダケデ、ミナ大喜ビダト思イマス。モシぷれぜんとマデイタダケルノデアレバ、地球ノモノハ、ナンデモトテモ珍シク、アリガタガラレルノデハナイノデショウカ」
「ああ、そうか、こっちのもの、っていうだけでいいんだ」
「タダ、タイヘン恐縮ナガラ、めかにかるナオモチャハ、火星デモイロイロアリマス。素朴デ自然ナノガ、地球ラシクテヨロシイノデハナイカト……」
「ゲーム機みたいなのは、そりゃきっと火星のほうがすごいよね」
「となると、逆に昔ながらの木のおもちゃみたいなのがいいのか」
「おい、それなら、倉庫にいっぱいあるぞ」
「いや、よかった。さっそく積み込もう!」
物語
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2022.12.14
2022.12.28
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。