サンタ、火星へ

2020.12.23

ライフ・ソーシャル

サンタ、火星へ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/最近は火星でもクリスマスをやるらしい。しかし、さていったいなんのプレゼントを持っていったらいいのやら。/

「それよか、ごめんな、時間が無いのに、こんなところでムダ話させて。いますぐプレゼントを積むから。あれもさ、昔の人たちが子どもたちのためにていねいに作ってきたものなんだ。今の地球の子たちには、あんまり喜んでもらえないようだけれど、でも、火星の子どもたちに大切にしてもらえれば、いや、これからクリスマスもいっしょに引き継いでもらえれば、きっとうちの大将も喜ぶし、私たちも楽しみだよ」
「エエ、ゼヒソウサセテクダサイ」

「おい、ぼっとしてないで、さっさと運べよ」
「ああ、そうか、時間が無いんだったな」
「なんか考えごとか?」
「いや、おれ、火星語、始めてみようかな、と思って」
「おいおい、やめとけ。あのパイロットみたいな優秀な火星人じゃないんだから、おまえなんかじゃ、モノにならないよ」
「それはわかってる。でもさ、おれが片言でも始めたら、ほかのだれかが興味をもって、もっと勉強するかもしれないだろ。そしたら、それを知ったもっとすごいやつが、いつか通訳になれるかもしれないだろ」
「ああ、さっきの夢を引き継ぐっていう話か。まあ、語学でも、科学でも、芸術でも、スポーツでも、みんな最初はそんなもんだったんだろうからね」
「考えてみれば、クリスマスも似たようなものだろ。だれかが最初にサンタの夢を見て、それがずっといまも続いてる」
「ああ、そうだな、地球でも、宇宙でも、その夢がずっと続くといいな」
「うん、そう願っているよ」


2019年のクリスマスのお話 「北極の秘密基地にて」

2018年のクリスマスのお話 「サンタ、少子化問題に取り組む」

2017年のクリスマスのお話 「コンビニはクリスマスも営業中」

2016年のクリスマスのお話 「クリスマスケーキにロウソクはいらない?」

2015年のクリスマスのお話 「クリスマスの夜、サービスエリアで」

2014年のクリスマスのお話 「なぜサンタは太っているのか」

2013年のクリスマスのお話 「最後のクリスマスプレゼント」

2012年のクリスマスのお話 「サンタはきっとどこかにいると思うんだ」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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