サンタ、火星へ

2020.12.23

ライフ・ソーシャル

サンタ、火星へ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/最近は火星でもクリスマスをやるらしい。しかし、さていったいなんのプレゼントを持っていったらいいのやら。/

「アノ……」
「え、なにかまだ問題がある?」
「コノ手紙、イツ届キマシタカ?」
「先月だったかなぁ」
「送ッタノハモット前カ……」
「それがどうかしたの?」
「アナタガタハ、火星ノコトヲ、ドレクライゴ存ジデスカ?」
「火星のこと? いや、ごめん、不勉強で……」
「火星ノ自転ハ24時間チョットト、ホボ地球ト同ジ昼ト夜ガアリマス。マタ、地軸ガ傾イテイルノデ、地球ト同様、季節モアリマス。デモ、地球ヨリ外側ナノデ、一年ガ地球ノ二年弱ト長イ。ソシテ、季節ガ一周スルクライガ、火星人ノ寿命デス」
「え、火星人は二年足らずで死んじゃうっていうこと?」
「エエ、私タチノ人生ハ短イ。火星人ハ、頭足類系ナノデ、地球人ノ四十倍ノ速サデ成長シ老化スルノデス」
「一日に一月以上の価値があるということか……」
「ダカラ、私タチハ若イウチニ、イッパイ勉強シマス。時間ガ無インデス。私モ、地球語ヲ、コノ一週間デ必死ニますたーシマシタ」
「遊んでいるヒマなんかないよね」
「イエ、時間ガ限ラレテイルカラ、遊ブトキモ本気デナイト」
「ムダにダラダラ過ごしてたら、二年の一生なんて、あっという間だもんなぁ」
「あれ? そうか、この手紙を書いてくれた子も、この数ヶ月で、十歳分くらい大きくなっちゃっている、っていうこと?」
「ソウナンデス。カンタンニハ見ツカラナイカモシレナイ」
「サンタのことも、手紙を書いたことも、忘れてしまっているかもな」
「イエ、ソンナコトハアリマセン。絶対ニ覚エテイマスヨ。タトエ彼ガ見ツカラナクテモ、彼ガ手紙ヲ書イタコトハ、ミンナガ覚エテイマス。私タチハ、夢ヲ引キ継ギマスカラ」
「夢を引き継ぐ?」
「ホラ、コノろけっと、ドウヤッテデキタト思イマスカ?」
「そりゃ、優秀な火星人なら、ちゃちゃっと」
「ソンナ手品ミタイナコトガデキルナラ、苦労シマセン。コレヲ作ルダケデ、地球時間ト同ジク、ヤッパリ二十年クライカカッタンデス。マシテ、隣ノ地球ニ、アナタガタノヨウナ友人ガイルコトガワカッテカラ、イツカ訪レヨウト計画シテ、モウ百年デス。寿命ノ短イ私タチニ、ソレガドレダケタイヘンナコトカワカリマスカ」
「つまり、数百世代が同じ夢を引き継いで実現してきたということ?」
「エエ、大キナ夢ハ、一人一代ダケデハカナエラレナイ。地球ノ方々ガ、私タチ火星人ヲ頭でっかちナンテ言ッテイルノモ知ッテイマスガ、昔ノ人ノ夢ヲ大切ニ預カッテイルカラ、キットコンナ姿ナンデスヨ、ははは」
「いやいや、頭デッカチだなんて」
「おいおい、おまえ、タコって言ってただろ」
「イエ、イインデスヨ、オ気ニナサラズ」
「すいませんね、ほんとうちら、いまだに性根がサルのまんまなもんで」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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