14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第7章|意志・こころ〉第2話
〈じっと考えてみよう〉
Q1~Q3につき、どういう〈とらえ方〉をすれば、前向きな気持ちになれるでしょう?
空欄(1)~(3)に書き込んでください。
前回わたしたちは、なにか〈出来事〉に遭遇したとき、その〈とらえ方〉によって、生じる〈気持ち〉が変わってくることを学びました。宏美と多英は同級生にけがをさせてしまった。その悪い出来事に対し、宏美はマイナス方向に落ち込む一方でしたが、多英はプラスの方向へ立て直すことができました。それぞれの〈とらえ方〉が異なったからです。
そのことをさらに理解するために、冒頭に問いを3つ用意しました。さて、あなたはどんな〈とらえ方〉で〈気持ち〉をプラス方向に変えることができたでしょうか。なお、最後のページに答案例を紹介しておきましたが、これは一つの参考です。他にもいろいろ考えられるでしょう。
さて、あなたはいま、学校で国語や数学、理科、社会、英語などさまざまな科目を勉強しています。そして定期的に科目ごとのテストがあり、考える力を試されています。学校でやるテスト問題には、必ず先生が用意した正解があって、あなたはその正解を引き出せればマルがもらえます。いまはそういう基本的な段階の思考力をやしなっています。
ところがあなたはじょじょに、次の段階の思考力を身につけはじめる時期にきています。それは、ものごとをどうとらえるかという思考力です。ものごとをどうとらえるかというのは、いかようにでも答えがある問題です。あらかじめ正解が一つだけ用意されているテストの問題とは種類がちがいます。しかし、世の中を生きていくにあたっては、こうした正解のない問題のほうがむしろ多いのです。
キャプテンである自分が2試合続けて大きなミスをした。このショックと責任の重圧からどう自分の心を守ればいいのか。また、同級生から友だちの少なさを言われたときに、その言葉をどう払いのければいいのか。また、経済苦の家庭に生まれ、自分は大学進学できない境遇だと知ったとき、どう自分の運命と向き合えばいいのか―――。
これらの人生問題には「唯一(ゆいいつ)これが正しい」といった答えはありません。なにか公式があってそこに数を当てはめれば自動的に正解が出るものでもありません。覚えた歴史年号を空欄に埋めれば点数がもらえるような問題でもありません。その状況をたくましく乗り切る答えは人それぞれ無数にあります。
あなたはいまから5年や10年もすれば、社会に出て職業を持ち、独立して生きていくことになります。そこで直面する問題の多くには、だれかが用意してくれた正解はありません。目の前の出来事や事実をどうとらえて、どう気持ちをつくり、どう行動していくか。いわば、自分で正解をつくり出していくしかないのです。そのときあなたは、感情に流されるまま悲観的にものごとをとらえることもできるし、意志を持って楽観的にとらえることもできる。どちらの姿勢がよりよい生き方につながっていくか、決めていくのは自分です。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』
2016.08.01
2016.09.05
2016.10.03
2016.11.02
2016.12.06
2017.01.03
2017.02.05
2017.03.06
2017.04.06
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。