声優のパブリシティ権

2026.05.24

ライフ・ソーシャル

声優のパブリシティ権

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/「歌手」が歌っている声は商品であるように、「声優」がなんらかの役柄を演じている発話は、出演料を取っている有価の商品だ。しかし、ラジオなどだと、本業が歌手だろうと、声優だろうと、しゃべくりの内容の人柄を含めたパーソナリティとしての出演であって、その地声の語りの生の声質そのものを商品にしているわけではない。/

 自分の声を「生成AI」で学習させて利用されている。パブリシティ権(商品化権)の侵害だ、と訴えている。根拠は、みんなが自分の声と似ている、と言っている、だって。

 数年前、歌手はもちろん、ヒットラーのように、多くの録音が残っている著名人をAIに学習させて、自分の声質をそれに置き換える、というのが流行った。が、これは、実際のところ、かなり難しかった。うまいのは、まず内容がそれっぽいこと。そして、抑揚や間合い、アクセント。つまり、声質以前の話し方をうまく似せていないと、それっぽく聞えない。

 近年のSUNOなどだと、そのためにむしろ原曲の方をかなりかってに自動的に改編してしまう。たとえば、フレディ・マーキュリー風にすると、ただ声質に、彼独特のディレイ・ディストーションをかけるだけでなく、音そのものを後にためまくるし、上に飛ばしまくる。それでフレディ風に聞えるようにしている。

 さて、声優だが、ここにはいくつもの法律上の問題がある。声優の地声って、それほど多くのサンプルがあるのだろうか。もちろんラジオ番組などをやっていれば、相応の量があるだろうが、それは「声優」としてのパブリシティになるかどうか。「歌手」が歌っている声は商品であるように、「声優」が「声優」であるのならば、なんらかの役柄を演じている発話は、出演料を取っている有価の商品だ。しかし、ラジオなどだと、本業が歌手だろうと、声優だろうと、しゃべくりの内容の人柄を含めたパーソナリティとしての出演であって、パーソナリティとしてのニセモノ(モノマネタレントがモノマネであることを隠して出演している等々)に対してはパブリシティ侵害を訴えられるが、ここでは、その地声の語りの生の声質そのものをラジオ番組などで商品にしているわけではない。

 電子楽器にもサンプリング音源がある。その音源そのものを丸パクして「音源」として販売するのは、当然、違法。だが、その音色での演奏にまでは、著作権は及ばない。フォントや絵の具なんかと同じだ。そもそもサンプリングと言っても、生楽器は、強弱で音色も大きく変わるために、サンプリングした生のデータを羅列しただけでは、実際の電子楽器の演奏では粒が揃わないから、事前に、またリアルタイムで調整している。また、これを言い出すと、サンプリングされた元の楽器の権利はどうなの、ということになってしまう。それがベーゼンドルファーだの、ストラティヴァリだの、というのを銘打って売り出すなら、音源というより商標権の問題。

Ads by Google

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。