/文脈は、文章の中には無い。状況を人間が感性的に想像補完しなければ、真相は理解できない。そして、発話はアクションであって、アクションは、そのアクションそのものより、アクションを起こした意図の方に意味がある。/
「ぶぶ漬けどうどす?」なんて、いまどき、あんなん、ゆーひと、いはりまへんわ。やけど、「や、お客さん、ええ時計してはりますなぁ」とか、「ぼっちゃん、ほんに元気で」とかは、あいさに聞きますえ。なんも買いもせんと、店に長居するんは、こっきりよろしおすわ。ゆうてる言葉を文字どおりに聞く、やくたいなAIさんみたいなんは、古い町には暮らしにくいんとちゃいますやろか。
各社、いろいろ出ているが、結局、あれって、検索統計処理した人工無脳だ。たとえば、ロボット・ウェイターに、現行程度のアホAIに組み込んだとしよう。客が聞く「塩ある?」。ロボウェイターが店内在庫情報を検索して答える「ハイ、塩ガアリマス」。で、それで終わり。「あぁ? オレは塩がほしい、ってんだよ!」「アア、ソウデシタカ。ソレナラ、ソウオッシャッテクレレバ、ヨカッタノニ。御客サマハ塩ガホシイ、ソウイウコトナノデスネ。店モ御客サマノ心情ヲこぴーシマシタ。」「おいおい、つッ立ってるじゃなくて、早く塩持ってこい、ってんだよ! ボケ!」「エッ? ドウシテ塩ガアルト、私ガソレヲ持ッテコナイトイケナイノデスカ?」
アホAIが「意味」を理解できないのは、言葉の中でだけ、悟性(論理)的に情報を処理しようとするから。「文脈(コンテキスト)」なんて言うが、じつは、文脈は、文章の中には無い。このアホロボ・ウェイターとのトンチンカンな会話を人間が理解できるのは、この客がレストランの席に座っている状況を人間が感性的に想像補完するからであり、その状況を蝶番(ピポット)にして、バラバラの言葉を繋ぎ直しているからだ。
現実は、もっと難しい。「おかあさんなんか、大嫌いだ!」と言われて、この子は母親を嫌っているのだ、と文字どおりに受け取るようでは、母親としてどうかと思う。言葉は、あくまで表層的なコミュニケーションのシニフィアン(表現)であって、心理的なシニフェ(意味)とは違う。先の「塩ある?」と同様、発話はアクションであって、アクションは、そのアクションそのものより、アクションを起こした意図の方に意味がある。シニフィアンとしての表層的な内容より、なんでこの子は「おかあさんなんか、大嫌いだ!」などと、いまこの状況で言うのか、それを自分の全身で読み取らなければ、人間ではない。
ところが、近年、横からイッチョカミして、物事の意味も考えず、なにか言った言わない、やったやらない、で、話を四角四面に切り取って騒ぎ立てる連中もいる。やつらは、やたらむつかしそうな顰め面をしているが、まるで人間味の無いアホAIだ。そーいうほんがらにほたえるすかたんは、いらわんておこう。
(こんな記事を書いても、なんの話をしているのか、わからんちんな人の方が多いんだろうなぁ。いや、変にわかられても、妙に絡まれたするからなぁ。見ても見ぬフリ、聞いても聞かぬフリ、なにも仙人、家族もしょせんは他人事、というのが、保身栄達にはいちばんなんだろうな。やな世の中になったもんだ。)
純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、東京大学卒(インター&文学部哲学科)、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元東海大学総合経営学部准教授、元テレビ朝日報道局ブレーン。
解説
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2026.05.28
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。
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