/政治的にも、経済的にも、実際のところ、中国の支配下に。その結果、今度は中国や共産党と縁故の連中ばかりが出世して裕福になる一方、2015年の大地震もあって、地方は疲弊し、海外出稼ぎが常態化。/
政治的にもやっかいな国だ。交通の要衝であるために、中印の影響を受ける。
18世紀半ばに複数の王国をゴルカ王が統一してネパール王国となったものの、中国清朝やインド英国との戦争を強いられた。そのドサクサで、ラナ家が歴代首相となって国を乗っ取り、独裁政を強いた。
大戦後のインド独立運動の余波で議会がラナ家を倒したものの、こんどは国王が強権政治を布く。これに中国が介入して、1996年から共産党との内戦。王族を殺害したが、王弟が党を弾圧。2006年の革命で、ようやく共和国に。
とはいえ、政治的にも、経済的にも、実際のところ、中国の支配下に。その結果、今度は中国や共産党と縁故の連中ばかりが出世して裕福になる一方、2015年の大地震もあって、地方は疲弊し、海外出稼ぎが常態化。
もともと内戦のせいで、王宮も、政府機関区も、要塞のようだ。そこにいま、国会議事堂を新たに建設しているのだが、それまでの間、空港と政府機関区をつなぐ要路にあるコンヴェンションセンターに国会が置かれている。しかし、このコンヴェンションセンターからして、中国からの資金援助で建設された、これまた要塞のような建物。
若者の国内失業率は20%。昨年夏、バングラディシュで、軍人家族優遇に反対する若者たちが暴動を起こし、二代目の首相を追放した。ネパールの共産党系首相も、これを脅威とし、9月3日、税務不備を口実にSNSを禁止。これがかえって若者たちZ世代を刺激し、催涙弾なんかぶっぱなしまくるもんだから、とうとう昨日9日、国会のあるコンヴェンションセンターが襲撃されて炎上。
問題はSNSではない。民主政だの連邦政だのというのは名ばかりで、王族にとって代わったカトマンズの連中に権力と富が集中してしまっている。首相が辞めたくらいで、どうなるものでもあるまい。やっかいなのは、こうなると、中国御大が出てきて、そうなると、インドもちょっかいを出す。背後のチベット問題も絡んで、いよいよ代理紛争で収拾がつかなくなる。
(しかし、日本のニュースは、なんで、この話、採り上げないんだ? すぐ近くに似たような情勢がいくつもあるのに。いや、それだからか? それとも、潮来とか伊東とかくらいしか、取材力、分析力がないのか?)
純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、東京大学卒(インター&文学部哲学科)、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元東海大学総合経営学部准教授、元テレビ朝日報道局ブレーン。
解説
2024.08.26
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2025.09.11
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。
