/団塊世代とそのお仲間が次々と世を去った結果、いまや氷河期団塊Jr世代の方が人数で優り、身分的には劣勢ながら、選挙などでは前者と対等に競り合うところまできた。/
フジテレビの一件だけではない。都知事選でも、兵庫県知事選でも、いまの日本で想定外のことが起こるのは、高齢団塊世代の居座りと氷河期団塊Jrの憤懣の対立だ。これまでは、バブルのツケを後者に回すことで、かつての全学連よろしく、前者が同世代こぞってつるんで組織や社会をぎゅうじってきたが、そのお仲間が次々と世を去った結果、いまや後者の方が人数で優り、身分的には劣勢ながら、選挙などでは前者と対等に競り合うところまできた、ということ。つまり、事実上の世代間革命だ。
厄介な立場に追い込まれているのは、この両者の狭間。60代で、名目上は組織や社会の責任世代だが、実際は、今に至るまで会長だ、顧問だと、ずっと居座り続けてている団塊世代の使いっ走りでしかなく、いまだ一度も実質的な決定権を持っていない。それで、トラブルが起きて、責任を取れ、始末をしろ、と言われても、典型的な中間管理職の悲しさ、陰に隠れて出てこない高齢団塊世代にいちいちお伺いを立てないと、自分たちでは何もできない。
じゃあ、高齢団塊世代も、その子分の狭間世代も、この機会にまとめて押しのけて、団塊Jr世代が天下を取ればうまくいくのか。たしかに彼らは数が多く、声は大きいが、残念ながらバブルのツケのせいで、狭間世代ほどにも社会経験を積んできていない。それどころか、組織に属したことさえ無い者がやたら多い。選挙などで票は取れても、人望があるか、新たな同志を集められるか、というと、かなり怪しい。だから、彼らが代わって組織や社会のトップになったところで、まして高齢者でっかちの歪んだ人口構成のいまの日本、これをうまくまとめていける可能性はかなり低い。
とはいえ、まあ、革命なんて、毎度、そんなもの。ひっくり返すところまでは、みなの意見は一致してはいるのだが、実際にひっくり返してしまうと、その後、どうするかでは、百家争鳴、諸論紛糾。取ったり取られたりで、数十年をムダにする。そんなことをやっているうちに、もう一つ下の若い世代から、ゴルディアスの結び目を力尽くで断ち切るような、ナポレオンだかヒットラーだかみたいなのが出て来て、団塊の親世代同様、ごちゃごちゃと内輪揉めばかりしている団塊Jrもまとめて葬り去る。明治維新でも、結局、後を引き取ったのは、西郷や大久保のような維新の志士たちではなく、山県有朋や伊藤博文ら、さらに次の世代だった。
なんにしても、もうどうもどのみち碌なことにはなりそうもない気配だ。上も下も騒ぎをややこしくするばかりで、上にも、下にも、この事態を収拾する能力はなさそう。それまで自分は生きてはいられないだろうが、いまの二十代に期待しよう。山県有朋や伊藤博文は、維新後の混乱を見越して、すぐ海外に脱し、見識を広めて、来るべき自分たちの時代に備えていたぞ。
解説
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大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。
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