目標と目的~坂の上に太陽をのぼらせよ

画像: Yasushi Sakaishi @ Lanta Design

2017.04.06

ライフ・ソーシャル

目標と目的~坂の上に太陽をのぼらせよ

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第2章|成長〉第4話

〈じっと考える材料〉

高校2年生になった由佳(ゆか)は、勉強への興味をなくしはじめていた。

勉強はもともと好きなほうだが、「勉強って、結局、頭のゲームみたいなものかしら。試験のやり方を覚えて、いい点を取る。いい高校に合格し、次はいい大学をねらう。そんな繰り返し。いい成績を取れば、それは気持ちいいし、親や先生にもほめられる。でも、それが勉強をやる理由? 勉強ってほんとうはなんのためにやるの?……」と思うようになってきたのだ。

由佳は、夏休みのボランティアプログラムに参加した。「フェアトレードを体験しよう」という活動だった。フェアトレード(公平貿易)とは、発展途上国の人たちが作ったものを適正な価格で継続的に取引することで、彼らが適正な収入を手にし、生活の自立ができるよう助ける仕組みである。彼らに一方的に寄付金を与えるような形では、彼らがいつまでたっても自立できないおそれがあるからだ。

その会場には、ある発展途上国から1人の社長Gさんが来ていた。

Gさんは自国で綿製バッグを製造する会社を経営している。40人の作業員を雇い、手製で1つ1つバッグを作って日本に輸出している。独特な民族調のデザインと素朴な味わいが人気だ。そのバッグが日本で安定的に売れると、40人の作業員は安定的に収入を得ることができ、家族を養い、子どもを学校に行かせることができる。また、バッグが1個売れるごとに、地元の学校に図書が1冊増えることにもなっている。

由佳たちのボランティア作業は、日本の高校生や若者が気に入るバッグのデザインやアイデアをまとめて、Gさんに英語でプレゼンテーションするというものだった。Gさんは自国に戻り、それらのアイデアをヒントにして、さらに日本で人気の出るバッグを作るのだ。由佳はどんどんアイデアを出した。

由佳はこの日のボランティアに活動して、国際語である英語の未熟さを痛感した。また、経済の仕組みやデザインにも興味を持った。さらに、自分が教科書で習っている世界史は、Gさんの国の立場からながめるとまったく違う世界史になるだろうなとも思った。いずれにしても、由佳のなかではなにか大きな変化が起きていた。「勉強はなんのためか?」という疑問にかすかな光が見えたようでもあった。


きょうは2つのことを考えてみましょう。

 □ 目標と目的の違い
 □ 坂の上に太陽をのぼらせること

目標と目的は同じような意味に思えますが、厳密に考えるとちがいがあります。まず目標とは、めざすべき数量・状態・しるしをいいます。たとえば、「練習目標は1日20kmの走りこみです」「○○検定で1級合格するのが目標」「今週の目標は参考書の50ぺージまで終えること」など。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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