14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第1章|自己〉第1話
〈じっと考えてみよう〉
並びかえの問題を3つ出しました。どうだったでしょう?
Q1とQ2は簡単です。数字の大きい/小さいや、面積の大きい/小さいは、明確に比較ができ、順番に並べること(これを「序列化」という)ができます。
ところが、Q3はどうでしょう。「青っぽくにじんだ丸い形」と「赤くぼんやり発色する星のような形」「複数の色が帯になった台形」───この3つを何かの基準で並べられるでしょうか。
これらはうまく序列化できません。なぜなら、これら3つは、単純な色づきではないし、形や輪郭もまちまちなので、なにか基準を当てはめて比べることが難しいからです。
また、赤や青といった色の世界には、そもそも優劣(ゆうれつ)や上下がありません。赤と青を比べて、赤が優(すぐ)れていて青は劣(おと)っているとか、黄が上で緑は下だとか、そういう序列はありません。形も同様です。丸と星形と台形を比べて、どれがよくてどれがわるいかと判じることはできません。
さて、人の個性をこの「色」や「形」としてとらえたらどうでしょう。
つまり、あなたの性格は色です。そして身体や考え方は形です。もしあなたの性格が、いろんなことに情熱を燃やそうとする快活的なものなら、それは「赤」という色かもしれません。もし性格が冷静で何ごとにも落ち着いているなら、それは「青」かもしれません。
そしてそれら性格という色を発する器(うつわ)のようなものとして身体がある。世の中には、体が太い人/細い人、背の高い人/低い人、などさまざまいますが、それらは形の違いです。さらには、人の考えや行動にも傾向性や様式(英語では「スタイル」と呼ぶ)といったものがあります。それもこの形の違いとしてとらえることができます。
一個一個の人間は、独自の色(=性格)を発して、独自の形(=身体、思考・行動様式)を持つ生きものです。この色と形の組み合わせが、千差万別の個性をつくりだします。この世の中は、個性という名の宝石が天の川のごとくきらめく場所といっていいでしょう。
そのときに、自分の色や形を他人のそれと比べてどうだこうだと神経質に考えてもしょうがありません。自分は自分であればよいと気楽にかまえることです。
個性を出さなければ、と気負う必要もありません。笑いたいときはおおいに笑う。考えを言うときは考えたままをほがらかに表明する。なにか一所懸命になれるものを見つけて、それに打ち込む。すると勝手に個性が出てきます。そして、人から「あなたらしいわね」と言われたなら、それは個性の出ている証拠ですから、すなおに喜べばいいのです。
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。