14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第2章|成長〉第3話
〈S君からの相談〉
僕はなにか目標とか計画みたいなことに縛られるのがいやです。もちろん、学校で出された宿題はやるし、親から頼まれた手伝いもやります。でも、それ以外は自由にのんびり過ごしていたいです。ゲームをしたり、音楽を聴いたり、友達とスマホでおしゃべりをしたり、毎日の自由時間はそれなりに楽しいです。母親からは「なにかに打ち込みなさい」とよく言われますが、いま、特に打ち込んでいることとか、目指していることはありません。だいいち、自分がなにに打ち込めばいいかが思い浮かびません。こうやって過ごしていてはダメなんでしょうか?
〈Rさんからの相談〉
わたしは成績がごく普通の生徒です。がんばって勉強しても、平均点を取るのがせいぜいです。なので、人に言えるような立派な目標は立てられないし、立ててもできなければ自信をなくすことになるので、目標はなるべく立てないようにしています。目標って生きるために必要なものですか? そして、こういう考え方をするわたしはよくないですか?
前回に続き、S君とRさんの相談から「目標」について考えましょう。今回は次の3点について書きます。
□ 越えるべきもっとも高い壁は「心の壁」
□ 小さな目標の積み重ねが、自分を「健やかに・高く・遠くまで」行かせる
□「目標をもたない生き方」を自分が美しいと思うかどうか
なにか目標をかかげようとするとき、そしてその達成に向かうとき、わたしたちの前に壁が現れます。やる気をなえさせる壁です。この壁には4つの種類があります。それは───
1)能力の壁
2)財力の壁
3)環境の壁
4)心の壁 です。
1つめは「いまの自分にはそれをやる能力がない」という壁。2つめは「お金がないから難しい」という壁。3つめは「自分の置かれた環境が不利だ(たとえば、不便な地域に住んでいるとか、親が教育熱心でないなど)」という壁。そして4つめは「失敗がこわい、めんどうくさい、なんとなく不安だ」という壁です。
なにかに挑戦しようとするとき、能力がない、お金がない、環境がよくない、といった理由は、たしかに自分のやる気をしぼませます。しかし、歴史上の偉人の本を読んでみてもわかるとおり、彼らにとって、そうした能力的・物理的困難は最終的な障害物にはなっていません。挑戦するにあたって、こえるべきもっとも高い壁は、実は自分のなかにつくってしまう心の壁です。おそらくRさんも、この壁が気持ちを消極的にさせているのでしょう。
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14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。