14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第3章|価値〉第5話
前回に引き続き、中学生の玲子、夏穂、翔太の3人の会話を材料に次のことを考えていきます。
〈じっと考える材料〉
玲子:
MIKAKOはいつ見てもきれいだなぁ、美しすぎる。見てよこの写真。この洋服のコーディネート最高だと思わない。バッグのデザインもおしゃれだわ。今年はピンクが流行するのかしら。目元のメイクやヘアスタイルも完璧ね。
翔太:
(写真を見ながら)こんな派手なファッションがきれいだって、とんでもない。ごちゃごちゃしすぎだよ。そもそもぼくはこのピンクって色が好きじゃない。
玲子:
翔太は好き嫌いでファッションを見てるだけよ。美しいものを見分けるセンスってものがないのよ。じゃ、あなたはどんな服装がカッコイイと思うの。
翔太:
そうだな、たとえばこれだよ(持っていたサッカー雑誌を見せる。有名なプロサッカー選手のふだん着の写真がのっている)。ジーンズにTシャツ、シンプルでカッコイイだろ。ファッションは派手な色やデザインにごまかされちゃダメなんだ。着こなしが大事なのさ。
玲子:
そんなヨレヨレのジーンズ、趣味が悪いし、ぜんぜん着こなせていないわ。この服装がカッコよく見えるのは、翔太がこの選手をカッコイイと思っているからよ。この選手が着るものなら、あなたは何でもカッコイイって言うわ。ところで夏穂、あなたはどんな服がいいと思う?
夏穂:
わたしはユニフォーム姿の人にあこがれるな。キャビンアテンダント(旅客機の客室乗務員)とかホテルの人たちとか。ああいう働く服のきりっとした雰囲気が美しいと思う。あ、そうだ、きりっとしたという意味では、和服も好き。特に無地で落ち着いた色のもの。それを着ながら凜(りん)と歩いている女性って素敵だと思わない?
翔太:
それにしても夏穂は好みが大人だね。でも、地味だけどカッコイイということはあるような気がする。たとえばサッカーで、デフェンスがしぶとく相手にまとわりついてボールを奪うプレー。地味だけどカッコイイ。特にぼくはデフェンスやってるからよくわかるんだ。
□ この3人の会話では、美しい(あるいはカッコイイ、きれい、素敵)と感じるファッションについて、いろいろな意見が出ています。ファッションのように、美しいと感じるものが個人によってばらばらになるものをほかにもあげてみましょう。
□ では逆に、多くの人のあいだであまり意見のちがいがなく、だれもが美しいと感じるものをあげてみましょう。
□ 自分が美しいと感じたものに対し、ほかの人が「美しくない」と言ったとしましょう。その場合、その人の感じ方がまちがっているのでしょうか? それとも自分の感じ方がまちがっているのでしょうか? それとも、「まちがっている/まちがっていない」とは別の問題でしょうか?
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。