14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第5章|人生〉第6話
〈じっと考えてみよう〉
=甲子園球児の挫折=
雄大(ゆうだい)は小学校のころから天才ピッチャーと言われた野球少年である。もちろんプロ野球選手になるという夢をもっている。プロの世界に入ることは、はるか高い山の頂上を目指すことであり〈図のD点〉、日々練習に明け暮れた。中学でさらに実力をつけ、名門野球部のあるK高校に入学した。2年生からエースを任された雄大は甲子園でおおいに活躍し、世間からさわがれる存在になった。そして2度目の甲子園出場となる3年生の夏の大会。雄大はたくみな投球でチームを勝利にみちびいていった。結果的に準決勝で破れはしたものの、プロ球団のスカウトたちに雄大がプロでも通用する逸材であることを示すにはじゅうぶんな試合内容だった〈B点〉。
このままいけば、ドラフト会議に自分の名前があがって〈C点〉、晴れてどこかのプロ球団に入ることができ、念願だった目標の山〈D点〉に登れることを確信していた。
ところが、そんな矢先、肩に重大な異常があることが判明した。医者からは、このまま野球を続けると、肩が一生動かなくなるかもしれないと告げられた。手術によって肩は正常にもどるが、野球は趣味くらいにしかできなくなるという。その瞬間、雄大の夢は無残にもくだけ散った〈X点〉。
雄大は1週間泣きくれた。なにも考えられなくなっていた。もう、自分の頭のなかには、プロ野球選手になるという山を望むことはできない。では、この先、なんの山を目指していけばいいのか……。しかし、現実の時間はどんどん進む。就職するのか、大学へ進むのか、決断しなくてはならなかった。
□もし、あなたが雄大だったら、今後の人生の方向をどう考えていくでしょうか? 夢破れた後に、新しい夢を見ようとするでしょうか?
小さいころから一途(いちず)に思い描いた夢。その夢が大きければ大きいほど、そして実現への可能性が高ければ高いほど、それを失ったときの苦しみは大きいものです。雄大はプロ野球選手になるという大きな山を目指していました。そしてたしかに8合目あたりまで来ていました。が、登頂への道が体の重大な故障によって絶たれてしまった。野球一筋で駆けてきて、いまからなにを目指せばいいのか。野球選手以外の山をどう見つければいいのか。苦しみや悲しみに浸っているひまはありません。雄大の高校卒業は間近です。就職か進学かの決断が迫っています。そこでの決断は、これからまだ何十年と続く人生のスタートになるのです。
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14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。