14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第5章|人生〉第4話
〈じっと考えてみよう〉
早希(さき)は、第一志望だった大学の入学試験不合格を知った晩、自分の選択ミスをおおいに後悔した。「なんで、ああいう判断をしてしまったのだろう。あのようにしなければ、受かっていたかもしれないのに……」。
彼女が悔やむ判断は次の二つだ。ひとつは、部活期間を延長したこと。彼女は書道部で活躍し、高校2年のときに部長を一年間務めた。3年に進級したときに、後輩のなかに部長をやれる者がいなかったので、責任感の強い彼女は、夏休み前まで活動期間を延ばし、部長を継続することにした。
後悔する二つめの判断は、予備校を途中でやめて自習に切り替えたこと。彼女は夏休みから本格的に勉強に集中しようと、予備校通いを始めた。ところが、自宅から予備校まで、バスと電車を乗り継いで片道1時間半ほどかかる。往復だと3時間、乗り継ぎが悪かったりすれば4時間かかることもある。乗り物のなかでは勉強に集中できないこともあり、彼女は秋以降、自宅での自習に切り替えた。
彼女がいま思うのは、
・3年への進級のときに部活をすっきりやめるべきだった
・自己流の勉強ではなく、予備校できちんと傾向と対策を教わるべきだった
・このような選択ミスによって自分は第一志望校に合格できなかった
早希は失意のなか、この春、第二志望の大学に入学する。
□問い:
早希のような状況にあったとしたら、あなたはどういうふうに心を立てなおして、第二志望の大学での新生活を迎えるでしょう?
わたしたちは、朝起きたときから夜寝るまで、つねになにかの選択をしています。 ……目覚まし時計が鳴った。このまま起きようか、あと10分寝ていようか。朝ご飯のテーブルで、きょうは温かいお茶を飲もうか、冷たい水にしようか。クラスの会議で発言をしようか、発言をやめておこうか。放課後、部活の練習に行くべきか、それともきょうは早く帰って宿題を片付けるべきか……。このように、いま、こっちをするか、あっちをするか。この方法でいくべきか、あの方法でいくべきか。Aの道を選ぼうか、Bの道を選ぼうか。あなたの人生は、こうした数かぎりない選択の連続でつくられていきます。
選択において、きょうのおやつはケーキにしようか、アイスクリームにしようかという決断は、軽い気分で決めてもいいものです。しかし、受験校をどこにするか、そこに合格するためにどんな勉強方法を選ぶかという大きな問題は、真剣に考えなければいけません。できるかぎり失敗が少なく、成功が多くなるように熟考します。
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14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。