14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第3章|価値〉第3話
〈じっと考えてみよう〉
□Q1:
A山は、高さ3000m。
B山は、高さ1000m。
どちらが「すごい山」だろう?
□Q2:
20万部売れた本と
2000部売れた本と
どちらが「すぐれた本」か?
□Q3:
一個5000円で売っている高級料亭の弁当と
今朝お母さんがつくってくれた弁当(値段はついていない)と
どちらが「おいしい弁当」か?
前回、「価値」とは、人がものごとに対して感じる「よい」性質のことであると学んだ。わたしたちはよく、なにか行動するときに「それはやる価値のあることだろうか」と考えたり、二つの物を並べて「こっちのほうがいいよね」とか「あっちはよくないな」とか比べたりする。それはつまり、あるものごとに対し、価値があるかないか、あるいは、価値が高いか低いかを判じているのだ。
そのように価値をはかることを「評価」という。ものごとを評価するときに大事になってくるのは、どんな「ものさし=基準」を使うかである。使う「ものさし」によって、みえてくる価値がちがってくるからだ。
〈Q1〉をみてみよう。3000mのA山と1000mのB山を比べて、どちらが「すごい山」か。この問いで重要なのは、なにをもって「すごい=よい=価値がある」とするかだ。いちばんわかりやすいのは、「標高」というものさしを使うことだ。標高の高い山ほどすごいと決めるなら、3000mのA山のほうがよりすごい山であり、価値がより高いという評価になる。
ところが「ものさし」を変えると、B山のほうがすごいとなる場合もある。たとえば、A山は活火山で溶岩がごつごつしただけの山である。いつ噴火するかもしれないので危険でもある。それに対し、B山は落葉樹におおわれるおだやかな山で、湖や滝もある。野花もたくさん咲いている。もし、「ハイキングでの楽しさ」というものさしを当てるなら、B山のほうがよりすごい山となり、価値もより高くなるだろう。
あるいは、A山はあなたにとって写真でしか見たことのない遠くの山だとしよう。それに比べB山は地元の山で、小さいころから家族や友だちと何度も登っている自分を育ててくれた山である。このとき、「思い出深さ」というものさしを当てるとどうだろう。圧倒的にB山のほうが、自分にとってすごい山であり、価値が高い山ではないだろうか。
このように山を評価するとき、ものさしはいくつもある。言い方を変えると、どんなものさしを使うかで、山はちがった価値をもつ。
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。