14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第3章|価値〉第4話
〈じっと考える材料〉
玲子(れいこ)、翔太(しょうた)、夏穂(なお)の3人は、美術の授業で「あなたが最近『美しい』と感じたものをいくつかあげなさい」という宿題を与えられました。その宿題について放課後話しあっています……
玲子:
わたしはまず、なんといっても、これ(ファッション雑誌を開く)。大好きなモデルのMIKAKOよ。どう、彼女の「美しい顔」「美しい髪」「美しい脚」「美しい服」、どれも文句なしにカッコイイでしょ。
夏穂:
わたしは、そうだなぁ、旅行で見た「美しい風景」とか、野草の花びらに見つけた「美しい模様」とか。
翔太:
「美しい」っていう言葉を男子はあまり使わないんだな。でもそういえば、書道の先生は、「美しい字は、美しい姿勢から」っていうのが口グセだ。
夏穂:
そうかぁ、「美しい」って、なにも物にかぎらないということか。姿勢は物じゃないから。
玲子:
最初にバイオリンの曲を聴いたとき、「音色が美しいな」と思った。これも物じゃない。
翔太:
だったら、サッカーやってるときにも出るね。「あれは美しいプレーだね」とか、「きれいなシュートだった」とか。
□問い
あなたが最近「美しい」と感じたものはなんでしょうか? 3つあげてみましょう。
ここでは美しいを広くとらえて、きれい、カッコイイと置き換えてもいいでしょう。そして、あなたはそれらのなにを美しいと感じたのでしょうか?
さて、あなたは「美しい」と感じたものになにをあげたでしょう。玲子がファッションモデルを例にしてあげたのは、人の容姿や服装についての美です。目についた物体の色や形をきれいというのは、もっとも一般的な「美しい」です。そうした外見の美については、ほかにも「自動車のデザインが美しい」とか「美しく印刷されたポストカード」「造型が美しい建築」などのように言えます。
夏穂があげたのは風景や花の美しさです。自然には美しいと感じるものがたくさんあります。富士山や夜空に横たわる天の川のように雄大な美もあれば、小さな花の模様や、顕微鏡でしか見られない結晶の規則的な配列など微小の美もあります。
翔太は姿勢の美しさを言っています。物以外にも美はあります。姿勢はしぐさや振る舞いといった動作的なことです。動作的な美がだんだん洗練されてくると、技(わざ)の美になってきます。「美しいプレー」とか「きれいなシュート」もその種類です。ちなみに、動作の技を美として芸術的に追求していくものに、能や歌舞伎、茶道などがあります。
次のページ○快さを与えてくれる
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』
2015.12.22
2016.01.19
2016.01.29
2016.02.16
2016.07.03
2016.08.01
2016.09.05
2016.10.03
2016.11.02
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。