14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第3章|価値〉第7話
〈じっと考える材料〉
玲子:
ああ、MIKAKOってやっぱりきれいな顔だちだなぁ。わたし、大人になったら整形手術しようと思ってるの。目を二重まぶたにして、鼻すじもすっと通す。人生変わるだろうな。少なくとも、毎朝自分の顔を鏡で見るときの劣等感にはさよならね。
夏穂:
わたしは整形手術には抵抗があるな。そこまでしなくても、って感じ。
玲子:
それは夏穂が顔に劣等感がないからよ。ちょっとした整形であれば、それはお化粧したり、かつらをつけたりすることとたいした違いはないわ。歯並びをよくする矯正だって整形のうちよ。
翔太:
いくら見た目を整えても、玲子のそのきつめの性格をどうにかしないと男子にはモテないと思うぜ。やっぱり大事なのは内面じゃないの。
夏穂:
整形について親はどう思うかしら?
玲子:
整形でちょっと目や鼻をいじるだけで、わたしは自分の顔に自信が持てる。そして毎日がウキウキできる。それこそわたしの内面が変わって、明るく変われるときよ。親だって、劣等感でふさぎこんでる娘を見るより、そっちの明るい娘を見るほうがうれしいにちがいないわ。
夏穂:
玲子は自分の顔のことを悪く思いすぎ。たとえば、あなたが写真部の活動で何かを真剣に撮ってるときの顔はとても素敵よ。
翔太:
ぼくも母親によく言われる。あんたはサッカーしてるときが一番いい顔だって。
玲子:
そうやって素のままでいいよって言ってくれる人がいればいいけどさ……
□ 将来、整形を施したいという玲子に対し、あなたならどんなことを助言してあげますか?
見た目をかっこよくしたい。その欲求はまったく自然のものです。その欲求が人間にあるからこそ、この世界は装飾やデザインにあふれ、視覚的に豊かになっているのです。また、あなたたちはいま、いろいろなものを見て、それにあこがれて、それをまねたいという気持ちが強い年代です。「まねる」とは「まなぶ=学ぶ」という言葉ともつながっていて、成長には欠かせない要素です。ですから、玲子がモデルのきれいさを追いかけ、自分も同じようになりたいと思うのは悪いことでもなんでもありません。ただ、それは「美を求める心」の第1段階であることを理解する必要があります。
きょうは、その「美を求める心」を3段階に分けて説明しましょう。3段階とは───
第1段階が「かっこいいものを持ちたい」
第2段階は「美しく生きていきたい」
そして第3段階が「身の回りの環境を美しくしよう」
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。