2026.05.25
これからの企業に必要なのは、「価値を設計する人」だ ― サービスサイエンティストという、まだ名前のついていない職業
松井 拓己
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)
ここまで読み進めて、「結局、自社も『努力しているのに伸び悩む』という構造に当てはまるのではないか」という思いを抱かれているかもしれません。 しかし、それは決して悲観すべきことではありません。なぜなら、いま多くの企業が直面している停滞は、社員の能力や意欲の問題ではなく、組織構造の中に「決定的に欠けている役割」があるために起きていることだからです。
サービス設計は「重要」なのに、「誰の仕事か分からない」
本連載を通じて一貫して描いてきたのは、現代の組織が抱えるある「矛盾」でした。
多くの企業は「これからはサービスの時代だ」「顧客体験(CX)が重要だ」と言葉では語ります。しかし、ではそのサービスを具体的に誰が「設計」しているのかと問われれば、明確な答えを持っていません。
サービスは、経営層が考える「戦略」そのものではなく、現場が行う「作業」そのものでもありません。あるいは、単なる「マーケティング」の一部でもありません。サービスの本質的な価値は、それらの「あいだ」に存在しています。
この「あいだ」を担う責任者が不在であるために、サービスは現場の工夫に丸投げされ、個人のセンスに依存し、属人化したまま再現も評価もされないという事態に陥っています。この「空白」こそが、企業の成長を静かに、しかし確実に止めているのです。
サービスサイエンティストは「正解」を出す人ではない
ここで改めて、本連載のタイトルでもある「サービスサイエンティスト」という存在について定義しましょう。
誤解を恐れずに言えば、サービスサイエンティストは決して万能な専門家ではありません。すべての正解を知っている人でもありません。彼らが担うのは、「価値が生まれる構造」そのものを扱うことです。
• 顧客は、体験のプロセスのどこで迷っているのか
• なぜ、企業側の意図と顧客の期待がズレてしまうのか
• どこを設計し直せば、現場の努力が「積み上がる価値」に変わるのか
これらを感覚的な精神論ではなく、論理的な「構造」として扱う。これがサービスサイエンティストの仕事です。つまり、これは新しい思想や概念ではなく、組織を動かすための具体的な「役割」であり「仕事」なのです。
「役割がある組織」と「ない組織」の決定的な違い
サービスサイエンティストという役割が組織に存在するかどうかで、数年後の企業の姿には決定的な差が生まれます。
この役割がある組織では、日々の改善が単なる「点」で終わらず、価値の進化という「線」になります。また、異業種の事例も表面的な「真似」ではなく自社への「応用」へと昇華され、現場の工夫は組織全体の資産として蓄積されていきます。
逆に、この役割が欠落している組織では、どれほど優秀な個人がいても、その成果は個人の中に留まってしまいます。この違いは「才能」の有無ではなく、価値を設計する「役割」が定義されているかどうかにあります。
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| 提供会社: | サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング) |
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サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)
サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新
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