企業風土から見るフジテレビの落日

2025.01.23

経営・マネジメント

企業風土から見るフジテレビの落日

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/社内は、縁故採用の「上級」社員と、有名大学から一般採用した「下僕」社員がいて、後者は、上司上級社員に取り入り、下請やAD、社内アナを含むB級タレントを「奴隷」としていじめて憂さ晴らししていた、というような話も。だから、現場のドロドロは、上級社員は、ほんとうに知らなかったのではないか。/

そもそも「アナウンサー」の仕事が大きく変わった。いまでも、なんでもいいから有名になって売れたい、という女性がいないではないだろうが、率が落ちて番組のタレント売り出し力が無くなり、そんなだったら、アナウンサーなんかより、一芸Youtuberとしてカリスマタレントになったほうがまし。また、どうでもいい地方イベントの食レポのようなものは、外部事務所の売れないタレントたちの小銭仕事のぶんどり合戦で、わざわざ高給取りの局アナが出向くまでもあるまい。

それより、もはやAIでも原稿が読める昨今、専属常駐の局アナの役割は、縮小する一方の報道部の記者に取って代わり、非常災害時などにも即応できる見識が求められている。アナウンサーは、ただ字を読む機械ではなく、視聴者に直接に言葉を語って伝える仕事だ。実際、ニュース原稿を読むにも、論点がわからなければ、強弱抑揚のつけようもない。だから、記者が書いたニュース原稿でも、内容はそのままながら、アナウンサー自身が、同音異義語など、話し言葉として全面的に自分で再確認する。つまり、出版で言えば、校正を兼ねている。医師の処方を最終チェックする薬剤師と同じ。そのために、仕事の合間にも、自分で部厚い時事ノートを作って勉強している人も多い。

にもかかわらず、いまだに昭和脳の旧人バラエティ・ディレクターが、若いプロ志向のアナウンサーに、有名タレントを紹介してやっちゃうよ、きっと驚いちゃうぞ、なんてやっているから、こんなことになる。とくにフジテレビの場合、40年も昔の編成・バラエティ偏重体質が、日枝体制、そのキャリア序列として抜けていない。しかし、いまの時流が読めずに、いまの視聴者に受ける番組がどうして作れると思うのか。まして肉弾営業なんていう話が出たら、そういうあらぬウワサに昔から最もナーヴァスな生保などが、すぐ手を引くことが、なぜわからないのか。

もう田中も安倍もいない。三悪人もナベツネも死んだ。タレント事務所の化け物たちも、次々と世を去っている。いまはマーケット・ヴォリュームゾーンの高卒レベルに下げて、その内輪受けのバカ騒ぎでかろうじて命脈を保っているが、世論をリードする上層が見放してしまっているから、このままだとテレビというメディアは、遅かれ早かれラジオなみに落ちていく。ドブ板営業しても、もう世間でも敬遠するような、かなり怪しいところしか御大尽スポンサーはいない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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