企業風土から見るフジテレビの落日

2025.01.23

経営・マネジメント

企業風土から見るフジテレビの落日

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/社内は、縁故採用の「上級」社員と、有名大学から一般採用した「下僕」社員がいて、後者は、上司上級社員に取り入り、下請やAD、社内アナを含むB級タレントを「奴隷」としていじめて憂さ晴らししていた、というような話も。だから、現場のドロドロは、上級社員は、ほんとうに知らなかったのではないか。/

その後の細かな話は、いろいろ差し障りがあるので省くが、問題は、この時期から何があったかだ。一般企業も、広告宣伝部が莫大な予算を握るようになり、電博経由で、視聴率トップを独走するフジテレビにCM出稿していることがステータス。この過程で、タレントとのバカ騒ぎや痴話沙汰もいろいろあっただろうが、基本的にフジテレビの方が優位で、わざわざフジテレビ側が一般企業に肉弾営業をかける必要は無かっただろう。

一方、タレント事務所。数字を持っている出したい大御所タレントの一方、さまざまな事務所からは売りたい、出たい新人タレントがごちゃごちゃ押し寄せてきていた。それで、番組ディレクターが個人的に出演をバーターに手を出していなかったか、大御所タレントの御機嫌取りで不適切な座を設けることがなかったか、つまり、肉弾営業を求めたり、その仲介をしたりしていなかったかが、いま問題となっている。

ただ、社内は、広告代理店などと同様、新興閨閥としての縁故採用の「上級」社員と、有名大学から一般採用した「下僕」社員がいて、後者は、上司上級社員に取り入り、よほどの成果を上げなければ生き残りもできず、下請やAD、社内アナを含むB級タレントの「バラドル」を「奴隷」としていじめて憂さ晴らししていた、というような話も。しかし、こういうディレクター以下の現場の腐ったドロドロについては、上級社員やプロデューサーは、外部の人々と同様、ウワサ以上には、ほんとうに知らなかった、もしくは、聞いても聞かぬフリでやり過ごしてきたのではないか。

また、フジテレビのヒットドラマ『やまとなでしこ』(2000)でチャカしていたように、一般論として、バブル、そして氷河期に、少なからぬ女性たちが職場を玉の輿狙いの狩猟場と見なしていたことも事実だろう。「アナウンサー」という社内タレントも、完全に過剰で、番組を取るためなら社内外での個人的な肉弾営業も厭わないという人がいなかったわけではなかろう。また、実際、少なからぬ「アナウンサー」が局を通じて知り合ったタレントやスポーツ選手、政治家、その他の著名人と結婚している。恋愛や不倫まで入れれば、その数倍にも上るだろう。しかし、これをテレビ局側が新規閨閥開拓の欲得で斡旋していたかどうか、は、個別事例次第。


終わった宴の後始末

しかし、この十年、テレビの視聴率は、ピークの半減以下。番組の売り出し力も衰え、各局にどんな「アナウンサー」がいるかなんて、ファンでもなければ知る由も無い。ネットに押されて劣勢の営業としては、二流企業でもCM出稿がほしいところだが、無名の「アナウンサー」なんか、肉弾営業したところで、有名AVタレントほどの商品価値も無い。いまだに昭和脳な「ふてほど」ディレクターが、文字どおり「藁」に縋って、女性をあてがい、かつての大御所や社内幹部をつなぎとめて自分の人脈を誇るかもしれないが、現に数字が取れていない。だから、若手たちからはすでにバカにされていて、番組に求心力が無く、積極的にいいアイディアを上げようなんて、だれも思わない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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