カスハラは従業員の精神を蝕む。カスハラを放置すれば企業の存続を脅かすことになる。経営者はしっかりと認識すべきだ。
ではカスハラはなぜ増えているのだろう。これについては定説がある訳ではない。しかしサービス事業者がカスハラをする要注意人物のことを「クレイマー」または「モンスター・クレイマー」と呼んで警戒する動きは、実はひと昔前からあった。
そもそも小生に言わせれば、カスハラなどという行為は、自分の人生がうまくいかなくて不満やストレスを溜めている人間がイライラを募らせた際により立場の弱い人に八つ当たりしているだけで、こうした事象は相当以前から存在したのではないかと疑っている。
もし最近になってカスハラが増えているとサービス業の最前線の人たちが感じているとしたら、一部の特殊な性格の「モンスター」ばかりでなくごく普通の生活者がハラスメントをしやすくなったのであり、その要因としては次の2つが大きいのではないか。
1. 消費者の権利意識の増進
「金を払うほうが偉い」という間違った価値観が社会に浸透しているところに、消費者保護の法整備等が進んだことが、一部の消費者をつけあがらせて傲慢にしていると考えられる。サービス業の従業員を下に見ている可能性もある。
2. SNS利用の拡大
企業や従業員に対する批判や不満が容易に拡散されるようになったため、カスハラ当事者にとっての「使い勝手のよい訴求手段」として確立したといえる。直近ではこれが最大の要因かも知れない。これで手軽に満たされ得る承認欲求がカスハラ行為を助長している側面もありそうだ。
こうした情勢を受けて厚生労働省は、労働施策総合推進法を改正し、従業員を守る対策を企業に義務づける検討に入った(具体的には、対応マニュアルの策定や相談窓口の設置などが想定される)、と幾つかの報道機関が報じている。
2019年の同法の改正では職場でのパワハラ防止策を企業に義務化している。先立ってセクハラについては、男女雇用機会均等法11条1項において事業主(企業)のセクハラ防止措置義務が定められたことや、やはり2019年に改正された男女雇用機会均等法11条2項において、労働者がセクハラ相談・事実関係確認への協力等を行ったことを理由とした不利益な取扱いの禁止が定められている。
これらの施行に伴って、多くの企業で「〇〇ハラ」を社内規則で禁じる動きが広がったことは周知の事実だ。今回の厚労省の動きに伴って、企業におけるカスハラ対策も一気に進むことを期待したい。
色々とカスハラについて述べてきたが、小生が最も訴えたいのはここからだ。要は「カスハラから従業員を守れない企業はその存続が脅かされる」ということだ。
業務改革
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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