成果を生むための実行力を高めるために、大切な視点があります。それは、習慣から一度はみ出す勇気です。日々の習慣にただ従うのではなく、あえて外れて俯瞰することで見えてくることがあります。アリの世界を例に見ていきましょう。
アリに学ぶ、脱線がもたらす発見
成果を生むための実行力を高めるために、大切な視点があります。それは、習慣から一度はみ出す勇気です。日々の習慣にただ従うのではなく、あえて外れて俯瞰することで見えてくることがあります。アリの世界を例に見ていきましょう。
働き者のイメージがあるアリですが、集団を作り、社会階層のような区分けがあることから、社会性昆虫と呼ばれています。働きアリはウロウロと歩き回って、エサを見つけると巣へ持ち帰ります。戻るときは、歩き回った道をそのまま律儀になぞり、道中にフェロモンを分泌して仲間に道しるべを残します。すると他のアリたちもフェロモンをたどってそのルートを行き来し、エサをせっせと運び続けます。最初のアリが回り道をしていれば、その非効率なルートをみんなで踏襲するわけです。
ところがそこで、列から外れて寄り道したり、途中で立ち止まったりして、仲間とは違う行動をとるアリが現れます。一見サボっているようにしか見えないので、このアリを「怠けアリ」と呼びましょう。怠けアリはそのうち他の働きアリたちに出くわします。こうして偶然にも、巣とエサの最短ルートを見つけ出しました。すると今度は、アリの行列は、元のルートと怠けアリが開拓した新ルートの2つのルートに分かれていきます。短時間で往復できる怠けアリのルートのほうが、フェロモンが強くなるため、次第に新ルートを選択するアリが増えていきます。そして最終的には、怠けアリが開いた最短ルートのみが残るそうです。
非効率から生まれる新しい道
この最短ルートは、怠けアリがいたからこそ見つかったものです。他のアリはたとえ回り道であっても愚直にエサを運び続けます。その作業を放棄してしまう怠けアリは、一見すると非効率な存在です。しかし、列を外れたアリが結果的に新しい方法を切り拓いてしまう。非効率に見える存在こそが、群れ全体にとってイノベーションの源泉となる。アリの世界では、それが当たり前に起きているのです。
人間の世界でも、既存のやり方にただ従って作業をしているだけでは新しい成果は生まれません。営業であれば「今日の仕事」を愚直に繰り返すことも大切ですが、ときに立ち止まり、別の視点から顧客や市場を見直すことで、新しい道が開けることがあります。実際、あるアメリカの郵便会社は、このアリのような探索方法を応用してルートの再開発を行い、大幅なコスト削減に成功しました。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
