前回の第6弾の記事では、『働き方改革』には3つほどの異なる狙いがあり、自社の課題や取り組み成熟度によって、どれが最も重要視されるべきかが異なることをお伝えした。今回は、『働き方改革』におけるICTの役割と留意すべき点をお伝えしたい。そしてこれらは概ね、『働き方改革』以外の業務改革でもあてはまることである。
『働き方改革』を強力に推進する手段としてICTの活用がよく挙げられる。ICTベンダーが大々的に宣伝しているため、小生と似たような懐疑的な人間になると、かえってその効能を疑いかねないかも知れない。しかし冷静に考えると、その省力化効果は既にかなりの程度実証されており、理屈で考えても納得の行くものが多い。
例えば、毎日大勢の社員が利用する業務アプリケーション(およびそのOS)が最新状態に維持されていることで、手作業もしくは旧式の業務アプリに比べてはるかに素早く、しかもミスなく処理されることに疑問の余地はないだろう。
また、社外にいながら、社内にいるときと同じようにモバイル端末で社内データベースにアクセスでき、業務アプリの処理を遠隔でできるようになった時の「これは便利だ!いちいち社に戻らなくてもいいんだ」という感激を覚えている方も多かろう。
もちろん、こうした省力化効効果や便利さを獲得するためには、システムの更新や増設および運営などにそれ相応のコストが掛かり、便利さと引き換えに情報漏洩や違法アクセスのリスクは高まるため、その分だけセキュリティ対策を進める必要があることは言うまでもない。つまり十分高い費用対効果が見込め、セキュリティ面でも安心できることは事前に確かめる必要がある。
それでも多くの場合、特に「効率向上(による長時間労働の是正、およびワーク・ライフ・バランスの改善)」が主たる狙いである場合には、ICTの費用対効果が高いことは小生のクライアントで観察できた事例からも十分推し量ることができる。
しかしそのためには幾つかの条件がある。先ほど触れたセキュリティ対策をしっかりすることもその一部だが、そうした諸点はICTベンダーの人が懇切丁寧に説明してくれるだろう。むしろ肝腎なことは、(システム導入のタイミングを遅らせたりすることになりかねないため)えてしてICTベンダーの人が教えてくれないものである。
その最大のポイントは「システム化は往々にして『固定化』と同義である」ということである。つまり一旦システム化してしまえば業務プロセスはそう簡単に変えられないということを念頭に置く必要があるのだ。
(注:継続的な業務改善を可能にするためのBPMという考え方に向いた業務プラットフォームも存在するが、今のところ基幹業務システムに全面的に適用できるものではない。そもそも現実的にBPM用のプラットフォームを利用している企業はごく少数派なので、大多数の企業にとっては「システム化は往々にして『固定化』と同義である」というのが現実である)。
業務改革
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/