クレイトン・クリステンセンのイノベーション理論、いわゆる「ジョブ理論」は、大企業のイノベーションの戦略策定にとどまらず、私たち個人のブランディング、パフォーマンス向上にも非常に役に立つ概念だ。
つまり、イノベーション(画期的なソリューションやサービス)とは、それまでは物足りない解決策しかなかったジョブや、解決策が存在しなかったジョブを片付けるようなプロダクトやサービスを開発することであると言えるわけだ。
そういう意味で考えれば、これまでマーケティングと称して行われてきたニーズ分析や顧客の属性分類は、ほとんど役に立たないことがわかるだろう。
こうしたことは、私たちの仕事にも頻繁に表れる。
「WebサイトのPVを上げたい」というニーズがあれば、通常は「SEO対策」や「リスティング広告」などの提案をするだろう。
ただし、ここには「顧客が片づけなければならないジョブ」は含まれていない。ジョブが「将来の主流となる顧客を探し出す」ことであれば、まったく関係のない人たちからのPVをいくら上げても、それはむしろ余計な仕事(ジョブ)を増やしているに過ぎないし、ジョブが「増加したPVを報告書に記載しレポートとして提出すること」であれば、徹底的な「SEO対策」や「リスティング広告」は効果的な施策となるかもしれない。(その担当者以外だれも望んでいないジョブだと思うが…)
セルフブランディングに生かす
セルフブランディングにおいても、対象者(ターゲット)のニーズをつきつめることはとても大切なことだが、この対象者の「ジョブ」まで言及することはあまりないだろう。
よくあるマーケティングのターゲティングは、ほとんどが顧客属性の分類によるものだし、そうした顧客分類に慣れきってしまうと、なかなか「ジョブ」には向きづらい。
年齢、ジェンダー、役職、立場といったものばかり目がいきがちで、「対象者の仕事」には向かいづらい。
そもそも差別化戦略をつくる際、どうしても強豪との比較や自分のアピールポイントを並べがちだが、「SEO対策」と同様に、それは手段でしかなく、顧客の仕事そのものではない。
また、「顧客のニーズ」を考える際、どうしても「機能面」ばかりを考えてしまいがちだ。いわゆる合理性というものだが、価格やボリューム、○○が付いているなど、わかりやすいからだ。
しかし、実際に顧客の共感を得たり、ファンを増やすことは、社会的なニーズ(評価を高める、立場をよくするなど)や感情的なニーズ(気持ちが良い、快適、楽しいなど)によることのほうが多い。
特に、ビジネス系では社会的ニーズ、B2C系では感情的なニーズが大きくなることが多い。
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セルフブランディング
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