/だけど、物語は、後半がおもしろいんだ。最後の最後、終わり一ページでどんでん返しかもしれない。だから、最後のページまで、途中で閉じちゃダメだ。きみはひとりじゃない。きみは祝福されている。きみを待っているひとたちがいるんだ。/
だけど、物語は、後半がおもしろいんだ。
最後の最後、終わり一ページでどんでん返しかもしれない。
だから、最後のページまで、途中で閉じちゃダメだ。
先なんか、どうでもいい? おい、待て、待てって! 立ち上がるんじゃない!
ほら、検索できた! そこから降りてきて、このリスト、見ろよ。
うん、そう、これ、きみの子どもたち、孫たち、曽孫たち。
ずーっと祝福されているだろ。ぜんぶ予定されているんだ。
いまここできみがいなくなったら、このリストも消えてしまうぞ。
それだけじゃないぞ、ほら、これ、見てごらん。
きみの教え子たち、その子どもたち。孫たち。これも、消えてしまうぞ。
どういうことかって? わたしにも、よくわからないが、
きみはきっと学校の先生、それも教え子の数が多いから、校長になるんじゃないかな。
いまはつらいだろうが、もう何年もしないで、きみは都会の大学に行くんだろ。
あんな連中には、もう二度と会わない。
心の傷は消えない、って? でも、それがきっとずっときみを支えるんじゃないか?
それがあるから、きみは、いまのきみの先生や校長のようにはぜったいにならない。
それで、きみはきっと多くの子どもたちを救う。
きみは、きみのように悲しみ苦しむ子どもを出さない。
そのためにも、きみはお入り用なんだ。きみはもう祝福されているんだよ。
わかるかい? こんな祝福を伝えることしかできないけれど、
先生や校長、友だちがどうあれ、きみは、きちんと見守られている。
だから、わたしが来たんだ。だいじょうぶだから、もうすこしだから。
おっと、なんか鳴っているな。次の仕事の催促だ。
こんな年寄りだが、とにかくわたしはきみの味方だよ。
来年、また会おうよ。もっと元気になってね。わたしも長生きするからさ。
ほら、カゼひくぞ。早く帰って、暖かいミルクでも飲んで、ぐっすり寝るんだよ。
そして、あした、目が覚めたら、なにがあっても堂々と胸を張ってな。
きみはひとりじゃない。きみは祝福されている。きみを待っているひとたちがいるんだ。
じゃ、次の子のところへ行くよ。いいね?
あ! え、そうか。まぁ、そういうこともあるかもな。
どうしたって? いや、次は、女の子でね、
きみのと同じ子どもたちがリストに続いているんだよ。どういう意味か、わかるだろ?
それだけじゃない、なんだかほかにもかなりの人数がリストにリンクされている。
医者か弁護士にでも、なるのかな。それとも、きみと同じ、学校の先生かな。
物語
2018.12.21
2019.12.17
2020.08.01
2020.12.23
2021.04.17
2021.12.12
2022.12.14
2022.12.28
2023.12.19
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。