サービスをタイプに分類してみると、差別化のポイントや努力の仕方を明確にすることができます。自社のサービスのタイプと、努力ポイントが合致しているか、いまいちど見つめ直してみましょう。
「手順型で、ロースキル・ロートレーニングでもできるサービス」と「気づき型で、ハイスキル・ハイトレーニングが必要なサービス」とでは、努力のポイントが大きく異なりそうだということが徐々に明らかになってきました。そこでここからは前回の続きとして、「気づき型で、ハイスキル・ハイトレーニングが必要なサービス」の代表格であるコンシェルジュサービスが価値を発揮するための努力のポイントの残る2つを明らかにしてみたいと思います。
コンシェルジュサービスを個人任せにしないための努力のポイント
コンシェルジュが価値を発揮するためには、お客様がいかにお困りかが分かっても不十分です。なぜならば、そのお客様からの例外要求にお応えすることは価値があるのか、逆にお断りしなければいけない要求なのかを、会社の顔として判断しなければならないからです。この判断は、現場や個人にだけ任せていてはできません。そこで必要になるのが2つ目のポイント「ビジョンの共有」です。お客様からの例外要求に対応すべきかどうかを、このビジョンやサービスコンセプトに照らし合わせた上で、現場で判断していくのです。ビジョンやコンセプトは掲げるだけでなく、現場まで浸透させなければ、サービスの現場では価値を発揮できないのですね。
さて、ここまできて、お客様がかなりお困りで、この例外要求にお応えすることは価値があると、コンシェルジュが判断できたとします。しかしここで、「例外要求への対応は、上司に申請して承認印が必要」という社内ルールになっていては、現場では例外要求に応えていられません。そこで3つ目のポイントとして、「現場へのある程度の権限移譲」が必要になってきます。例えば対応に際して生じるコストが、決められた上限値を超えなければ、現場の自主的な判断でお客様への例外要求に対応できるように権限移譲するのです。
このようにサービスを分類してみると、コンシェルジュサービスのような「気付き型で、ハイスキル・ハイトレーニングが必要なサービス」タイプの努力のポイントとして、「共感性」「ビジョンの共有」「現場への権限移譲」が浮かび上がってきました。一方で実態は、多くのコンシェルジュサービスは現場任せで、組織的に必要な努力が十分にできていないことが多いものです。先進的なサービス企業では最近、気付き型のサービスを、個人的な“気付き”に頼りきって提供することから脱却するために、気付き型サービスのガイドやサービスモデルを描いて、組織的に運用するケースが増えてきました。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
2017.04.18
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新