真の顧客志向を体現する方法(3) 【連載サービスサイエンス:第8回】

画像: Jonathan Petit

2015.10.15

経営・マネジメント

真の顧客志向を体現する方法(3) 【連載サービスサイエンス:第8回】

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

「顧客志向」を建前論に感じてしまうかもしれません。しかし最近、本気になって顧客志向を実現することで、サービスやCSで競争優位を築こうという企業が増えています。しかし一体何をしたら良いのか分からない。そこでサービスの本質を理解して、ロジカルかつ組織的に取り組むための方法として、サービスサイエンスが注目されています

例えばお客様は、打ち合わせの後に意思決定者にその内容を報告しなければならないかもしれません。このお客様は、意思決定者にうまく報告できるか不安を感じているとしたら。お客様の「意思決定者への報告もサポートしてほしい」という事前期待が見えてきます。そうだと分かれば、報告の役に立つ資料を作成して渡したり、簡単なデモの機会を設けたりと、気の利くサービスを提供するチャンスはいくらでも見つけられそうです。このように、ステークホルダーを整理することで、今までよりはるかに実効力のある取り組みが可能になります。

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BtoCサービスでも大切な「ステークホルダー」

実はこれはBtoCサービスにも効果的です。例えば、家や車などの高価なモノを販売するとき、旅行や結婚式など複数の人たちに向けてサービスを提供するとき、介護や保育などサービスの利用者と購入者が異なるときなどがそれに当たります。

お客様を1人に特定できないタイプのサービスはたくさんあります。この手のサービスでは、法人向けサービス同様に、目の前のお客様が満足してくれたのに購買やリピートに至らず苦戦することがよくあります。そんなときは、ステークホルダーの整理を実施してみる価値があるかもしれません。

例えば、高額な商品やサービスの購入を考えているお客様が相談に来られたとします。ステークホルダーを整理してみると次のようになります。

・相談に来られたのはご主人様

・本当の意思決定者は、家にいる奥様

・その奥様が一番気にしているのはペットのこと

・費用を負担してくれるスポンサーはご両親

この場合、親身になって目の前のお客様(ご主人様)の相談に乗っても、家に帰って意思決定者である奥様にうまく説明できなければ意味がありません。また、お渡しした資料が、目の前のお客様だけでなく、奥様の関心事項にもマッチしていなければなりません。目の前のお客様がその気になるだけでなく、お会いしていない意思決定者である奥様にも「私も話を聞いてみたい」「サービスを受けてみたい」という気持ちになってもらうことが必要なのです。

もったいない失点をなくそう

ステークホルダーを意識することは、普段からできているようで、実はなかなかうまくできていないものです。ステークホルダーを意識していないばかりにもったいない失点をしてしまっているケースは多々あります。

・目の前のお客様への対応に必死になって、待っているお客様への配慮ができていない。

・自分の担当のお客様への対応に集中するあまり、他のスタッフが担当するお客様には挨拶すらしない。

これではお客様を失ってしまいます。サービスでは、ステークホルダーは誰なのかをはっきりさせて、もったいない失点をなくし、得点のチャンスを掴んでいかなければ、お客様に選ばれ続けることはできないのです。


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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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