顧客満足向上(CS向上)は、多くの企業で取り組まれていますが、苦戦していることも多いようです。しかし一方で、顧客満足向上で大きな成果に繋げている企業では、顧客満足やサービスの本質を理解して、組織的なレベルアップに取り組んでいます。そこで今回は、サービスサイエンスの観点で成果を出すための顧客満足の取り組み方を明らかにしてみたいと思います。
「顧客満足で、経営に貢献する成果を出す」というテーマで進めてきました。これまでに、顧客満足の定義から始まり、CSとリピートの相関関係を少しロジカルにひも解いてみると、顧客満足向上で成果を出すための取り組みの盲点が浮かび上がってきました。そこで今回は、顧客満足度調査の結果を、サービスやCSの向上に活かすために、「やや満足」のお客様に「大満足」していただくための議論の仕方について触れてみたいと思います。
顧客満足度調査の結果を活用して、「やや満足のお客様に大満足していただくためにはどうしたら良いか?」について、いざ議論してみると極めて重要な情報がないことに気付きます。それは、「やや満足(4点)と答えたお客様は誰か?」という情報です。しかもここでは、ただ単にお客様の名前や企業名が分かっても意味がありません。ではどんな情報が必要なのかでしょうか?
お客様も平均してしまっている?
お客様は実に様々。しかし顧客満足度調査では、お客様を「顧客」ということばで十把一絡げにして分析してしまってはいないでしょうか。本当にそれで良いのでしょうか?
・初めての利用で不安を感じているお客様と、何度もリピートしていてサービスに慣れているお客様。
・急いでいて迅速に対応してほしいお客様と、時間に余裕があるのでじっくり相談したいお客様。
・できるだけ安価がいいお客様と、納得できれば高価でもいいお客様。
少し考えただけでも様々なお客様がいます。このお客様全てを「顧客」の一言でまとめて分析してしまうと、価値ある情報が埋もれてしまいます。それは、「やや満足(4点)と答えたお客様」が、どんな事前期待を持ったお客様なのかという情報です。お客様の満たされていない事前期待が掴めれば、お客様に大満足していただくために明日から何に努力するべきなのかは明快です。つまり、お客様を十把一絡げにしたり、自社の代表的なお客様像で議論や分析をするのはあまり得策とは言えます。お客様に関する情報として、名前やプロフィールだけでなく、事前期待に関する情報を掴んで、事前期待のタイプでお客様を分けて分析できると、極めて効果的な顧客満足度調査が進められそうです。
また、フリーコメントの分析は、色んなお客様を十把一絡げにして「どのコメントが多いか」の統計や相関を分析するよりも、どういう事前期待を持ったお客様なのかを意識して分析する方が効果的です。例えば、「サービス提供が遅かった」というコメントも、急いで利用したいお客様と、じっくり利用したいお客様とでは、そのコメントの重みや意味合いが変わってきます。同様に、「スタッフの対応が不親切だった」というコメントも、サービスの利用になれているお客様と、サービスの利用に不安があるお客様とでは、解釈や改善の仕方が変わってきそうです。
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service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新