顧客満足向上が受注やリピートに繋がらないワケ(1) 【連載サービスサイエンス:第9回】

画像: Dennis Lundqvist

2015.11.26

経営・マネジメント

顧客満足向上が受注やリピートに繋がらないワケ(1) 【連載サービスサイエンス:第9回】

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

 顧客満足向上(CS向上)は、多くの企業で取り組まれていますが、苦戦していることも多いようです。しかし一方で、顧客満足向上で大きな成果に繋げている企業では、顧客満足やサービスの本質を理解して、組織的なレベルアップに取り組んでいます。そこで今回は、サービスサイエンスの観点で成果を出すための顧客満足の取り組み方を明らかにしてみたいと思います。

顧客満足向上(CS向上)の取り組みは、多くの企業で取り組まれています。しかしその実態は、なかなかに苦戦しているようです。例えば以下のようなものです。

・顧客満足向上といっても、いったい何から手を付けて良いか分からない

・精神論や建前論ばかりで、現場もマネジメントも本気で取り組んでいない

・色んな事例を調べたが、結局のところ自社で何をすべきか分からなかった

・取り組みが現場任せ・個人任せで、組織的にうまく進められない

・長年取り組んでいるが、成果が出ない

・顧客満足は向上したのに、売上やリピートが向上しない

などなど。

例えばこんなことがよくあります。社内のだれに聞いても「顧客満足向上は大事だ」と答えるのに、そのための取り組みに本気で取り組めていない。現場もマネジメントも、忙しいことを理由に、顧客満足に関する取り組みは後回しになっている。ここから、「顧客満足が向上しても、どうせすぐに業績が向上するような成果は出ない」そんな本音も垣間見えてきます。

しかし一方で、顧客満足向上で大きな成果に繋げている企業では、顧客満足やサービスの本質を理解して、組織的なレベルアップに取り組んでいます。目に見えない顧客満足やサービスについて、サービスサイエンスの観点で少しロジカルに理解してみると、成果を出すための努力の仕方が見えてきます。それが、「なぜ顧客満足が向上したのに業績アップに繋がらないのか?」の謎を解くヒントになるのではと思います。今までの延長線上で努力していては成果が出ないかもしれない、そんな取り組みの盲点も見えてくるのではと思います。


■そもそも顧客満足の定義を共通認識していなければ、議論がかみ合わない

これまで顧客満足向上について議論し、活動してきた企業でも、「顧客満足の定義は?」と聞かれると答えに困ってしまうことが少なくありません。実は、顧客満足向上に苦戦する原因の1つがここにあります。顧客満足向上に取り組んでいるにもかかわらず、「顧客満足の定義」がばらついているようでは、議論や活動がかみ合わないのです。顧客満足向上に取り組むからには、その最初の一歩として、顧客満足の定義について組織で共通認識を持つことが極めて重要です。それでは、顧客満足の定義とは一体どういうものなのでしょうか。

『顧客満足は、お客様がサービスを受ける前に持っている事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られる。』

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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