「顧客志向」を建前論に感じてしまうかもしれません。しかし最近、本気になって顧客志向を実現することで、サービスやCSで競争優位を築こうという企業が増えています。しかし一体何をしたら良いのか分からない。そこでサービスの本質を理解して、ロジカルかつ組織的に取り組むための方法として、サービスサイエンスが注目されています
本気になって顧客志向や顧客満足を実現する時代になった
「顧客志向」という言葉を見ると、キレイごとや建前論のように感じてしまう方がいるかもしれません。しかし最近では、本気になって顧客志向を体現して、真の顧客満足を実現することで、サービスやCSで競争優位を築いていこうとする企業が増えています。しかしそのためには、一体何をしたら良いのか分からない。この壁を乗り越えるために、サービスの本質を理解して、ロジカルで組織的な取り組みを進めるための方法論として、サービスサイエンスに注目が集まっています。
当連載は、サービスの定義を理解してサービスの本質に迫ることからスタートしました。サービスの定義を理解すると、「お客様の事前期待を掴まなければ、サービスを提供することすらできない」ということが明らかになりました。また、この「事前期待」を構成要素に分解してみると、案外複雑な構造をしていて、どの事前期待に応えるかによって、お客様からの評価が大きく変わることも分かりました。
つまりは「お客様ごとの事前期待を掴んで、それに応えましょう」ということなのですが、そうはいっても、具体的に何をしたら良いか分からない。そこで今回は、これまでに触れてきた「事前期待」を中心に据えてサービスを開発したり、サービスを磨き上げることで、真の顧客志向や真の顧客満足を実現するための方法を紹介します。
何事も、目標を据えずに闇雲に取り組んでもうまくいきませんよね。これはサービス向上や顧客満足向上も同じことです。しかしサービスや顧客満足は目に見えないために、目標が曖昧なままにバラバラに取り組んでいることがとても多いのです。そこで、取り組みの目標地点として、「満たすべき事前期待」を定義することが極めて重要です。具体的には、お客様は誰かを事前期待の観点で定義するのです。
「お客様は誰ですか?」
この質問の答えを考えてみてください。ほとんどの企業では、様々なお客様がいるにもかかわらず、すべて十把一絡げにして「お客様」の一言で済ませてしまっています。もしくは、お客様を年齢や性別、職業や家族構成などの属性情報で定義しています。例えば「30代独身女性」や「大手製造業の経営企画部」といった具合です。
実はこのようなお客様の定義では、お客様の事前期待に応えるためにどんな努力をしたら良いのか、現場はピンとこないのです。「30代独身女性に喜ばれるサービスを考えよう」「大手製造業の経営企画部のお客様にサービスで喜んでいただくにはどうしたら良いだろうか?」と言われても、明日から具体的に何をしたら良いのかピンときませんよね。サービスは現場でお客様と一緒に作るものです。現場でのアクションが変わらなければ、サービスを変えることはできないのです。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
2015.07.23
2015.08.06
2015.08.20
2015.09.03
2015.09.17
2015.10.01
2015.10.15
2015.11.26
2015.12.10
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新